こういった小売業界の現状を念頭に置きながら、変革や米国経済の重要部門である小売業界について、主要なIT企業が掲げたビジョンを見てみよう。
Adobeは、店舗内のリアルタイムの客の動きを分析する研究のプレビューを行う予定であるほか、コンテンツ作成時に画面に応じて画像を自動的に最適化する機能や、カスタム開発なしでVRを利用できるようにするツールを提供していくと発表した。同社はまた、「Adobe Campaign」にHadoopコネクタを追加した。
Intelは、小売業界はセンサやモノのインターネットを活用することで即応性が高まると語った。また同社が小売業向けのイノベーションファンドをスタートさせてから1年間経過したが、その結果、同社のIoTツールが60店舗に導入されたことも明らかにした。同社はこの取り組みの主要な顧客として、中国の大規模オンライン小売企業であるJDを挙げている。この取り組みの基本的な考え方は、一部の店舗を無人化し、オンライン店舗と物理店舗を融合していくというものだ。顧客にはオランダの小売企業G-Starも含まれている。また同社は、米国は小売業のイノベーションで他国に後れを取っている可能性があることをほのめかした。
サムスンは小売業界向けのテクノロジとして、「サービスとしての小売店」であり、リアルタイムアナリティクスを備えたポップアップストアソリューションである「Connected Spaces」について説明した。このポップアップストアはB2B部門の製品で、同社のクラウドデジタル店舗プラットフォームである「Nexshop」やIoTツールを利用している。この考え方は注目に値するもので、トヨタがCESで掲げたコンセプトとも近い。
富士通は同社の生体認証を使用した顧客認証技術や、ファッション衣料用のRFIDを基盤とした取り組みを進めている。同社はこれらの技術を数年間にわたって発展させてきている。基本的な考え方は、同社のタブレットや小売店向けテクノロジのフロントエンドとして、センサを融合させていくというものだ。
JDA Softwareは同社のソフトウェアをアップデートし、人工知能(AI)を利用して、スペースに応じてフロアプランや人員や商品などの配置を推奨する機能を追加する。店員が在庫状況に基づいて商品を販売できるように、アナリティクスで得られた知見やアラート、その他の情報がモバイルデバイスに配信されるという。
Salesforceは、顧客のショッピング行動をマーケティングにつなげる取り組みとして、Instagramとの連携、AIによる顧客サポート、「Commerce Cloud」および「Marketing Cloud」の新コネクタを発表した。Instagramとの連携機能では、投稿に製品カタログをリンクできるほか、AIを利用した画像認識によって、Instagram上に投稿された画像の分析を行えるようになるという。
Oracleと宿泊施設やゲーム施設、小売店、レストラン、接客業などに安全なコマースツールを提供しているFreedomPayは、今回のカンファレンスで非接触型決済手段の統合デモを行った。
カンファレンスではほかにもさまざまな発表があったが、小売店のイノベーションにとって最大の課題は、これらの発表と現実の店舗への導入状況とのギャップだと言えるだろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。