このことが、取引手数料の高騰と取引の遅延につながっている。これがビットコインの価格変動と相まって、今後一部の取引では事実上ビットコインを使う意味がなくなっていく可能性がある。
SixgillのシニアサイバーインテリジェンスアナリストGabriel Glusman氏は、「最近では非常に多くの人が合法的にビットコインを購入しており、取引量が劇増している。しかし、1ブロックあたりの時間当たり取引量には上限があり、取引量がこの上限を超えると、取引が完了するまでしばらく待つ必要がある」と述べている。
「取引確定までにかかる時間が長くなっていること、取引量も多いこと、そして取引手数料などから、200ドル以下の支払いはビットコインで支払う価値がなくなっている。取引手数料は恐ろしく高騰している」と同氏は言う。
これは、ビットコインの購入や支払いに、数週間かかる可能性が出てきていることを意味している。サイバー犯罪者にとって、ランサムウェアの目的は最小限の手間で手軽に金銭を稼ぐことであり、支払いを受け取るまでに何日もかかるのは望ましくない事態だ。
「ランサムウェア攻撃を行う側は、被害者にお金を支払わせたいわけで、支払いができないのでは意味がない。決済はなるべく簡単にできる方がいい」とGlusman氏は述べている。
ランサムウェアの被害者は、できれば身代金を支払わずにファイルを取り戻したいと思いつつ、やむを得ず脅しに屈しているが、もしファイルを取り戻すためのビットコインの購入や支払いに何日もかかるようなら、身代金を支払う気はなくなってしまうかもしれない。さらに大きな問題もある。多くのランサムウェアでは、身代金の支払いまでに課している制限時間が短い。制限時間を過ぎると、身代金が高くなったり、データが永久に失われることもある。ビットコインの購入に時間がかかり、支払いも難しいとなれば、ランサムウェアの被害者がデータを取り戻すのは難しくなる。
これはランサムウェア攻撃者にとっても問題で、そもそも身代金を受け取れなければ、犯罪活動を行っている意味がない。
しかし暗号通貨の分野では、ビットコインの代わりになり得る通貨が数多く登場しており、決済のスピードと安全を求めているサイバー犯罪者の間では、これらの「代替通貨」の人気が高まっている。
Condra氏は、「2017年には、ダークウェブで使われる暗号通貨が多様化し始めた。例えばEthereumなどは、知名度が非常に高くなっており、ダークウェブの取引に使われることも多くなっている」と述べている。