2018年に向けてデジタル化戦略に修正を加えようとしているITリーダーやビジネスリーダーの間では、一部の領域で息切れが見えている一方、今や企業と社会のどちらにおいても、デジタル化による変化はほぼ不可避であり、あらゆる場所で変化が進んでいるという見方が広がっている。
2017年には、デジタル変革に対する切迫感と、早く結果を出すことに対する期待がこれまでになく高まった。(社内と社外の両方の)顧客から受ける要求はますます強くなる一方であり、しかも顧客はApple、Amazon、Googleなどの先進企業が提供する体験に慣れ、要求水準は上がっている。さらに顧客は、自分の期待が以前よりもはるかに速いスピードで満たされることを望んでいる。
これらのすべてが、ITリーダーやビジネスリーダーに対して、2018年の目標をスケールアップしながら、最終的なゴール(より正確には、最初の段階の最終的なゴール)に向かって進むことを迫っている。そのゴールとは、従来のビジネスモデルをゼロから再構築し、従来の事業の進め方よりも早く成長できる、首尾一貫した効果的なデジタル製品やデジタルサービスを生み出すことだ。その緊急性は高い。スタートアップや変革を終えた競合他社がもたらすかもしれない破壊的改革に後れを取らないよう、今後1~2年の間にそれを成し遂げる必要がある。
データによれば、企業はこの状況を理解しており、大規模な技術的改革に多額の投資を行っている。IDCが最近実施した調査によれば、テクノロジやサービスを含むデジタル変革の取り組みに対する支出は、2019年末までに42%増加し、1兆7000億ドルを超える規模に達する見込みだという。
筆者はこれまで、テクノロジ分野以外でのIT支出の伸びが鈍いことに警鐘を鳴らしてきた。何年にもわたって、デジタル化の基盤の発展が遅れ、挽回が困難な技術的負債の蓄積が進んでいたためだ。デジタル変革に後れを取っている企業が、5年以上も多額の投資を続けてきた先進企業に追いつくことなどできるはずもない。
デジタル化先進企業として挙げられることの多い、BurberryやTravelex、Nordstrom、Tescoなどの企業は、デジタル時代に向けたテクノロジと企業文化の総合的な改革を進めてきている。しかもこれらの企業は、何年にもわたって、業界内のほかの企業よりも多くの投資を行ってきた。より改善された、最新のシームレスな顧客体験は、企業の全体的な業績にも直結しており、これを実現する緊急性は高まっている。SIM Internationalが469人の最高情報責任者(CIO)を対象として実施した調査によれば、2017年の企業のIT予算は、前年比20%という驚くべき伸び見せている(少なくとも対売上費では)が、筆者の観点では、これこそが必要とされていたことだ。もしこの統計が正しければ、IT予算が久しぶりに大幅な増加を見せたことになる。
このIT予算の急増が突然起こったのは、企業がようやく大規模なデジタル変革に本腰を入れ始めたからかもしれない。