では、2018年のデジタル変革では、何が焦点になるのだろうか。技術的変革の面で最大の課題はスピード、経費、そして規模だが、最近公表された、2600人のCIOを対象としたGartnerの調査によれば、ITリーダーの最優先事項は成長だ。しかし、重要なのはそれだけではない。規模を追い求めれば、分断化されている企業の各機能部門を変革することになるが、これは容易ではない。実際多くの企業は、長年の間大規模な組織改革を避けてきた。これは、そのような取り組みが失敗する確率が高いことが知られているからだ。Havard Business Reviewの推計によればそのような取り組みの約70%が失敗するという。
デジタル変革の新たな3つの重要領域
現在の企業が持つ組織構造は、産業時代に作られた特殊化と効率性を追求するために設計された機能別組織モデルに基づいており、価値を生み出す組織内のつぎ目や交点に焦点を当てたものではないということは、よく指摘されている。機能別組織モデルは、変化が遅く、地理やその他の要因によるサービスのばらつきが大きく、競争が少ない世界を前提としたものだ。
しかし、インターネットとデジタル化が一般的になった結果、変化が当たり前になり、物理的な場所などをはじめとする、これまで重要だった差別化要因の重要性が急速に低くなったことで、企業間の競争は激しくなった(ただし、実際にはデジタル企業の所在地が重要になる場合もあることを示す証拠も出てきている)。これによって、競合他社との差別化に対する投資の重要性が高まっている。
最近は、顧客の獲得と維持には顧客体験が重要な要素であることが浮き彫りになってきた。競合他社からの乗り換えがクリック1つ、タップ1つで行えるようになったため、製品やサービスを見つけやすく、購入しやすく、利用しやすくし、利用する際の支援を受けやすくした企業は、極めて有利になる。IBMが最近公表した、2017年の顧客体験に関する調査によれば、先進企業の80%が顧客によるレコメンデーションを3つ以上のチャネルで提供しており、76%が顧客の個人的な選好に合わせた体験を提供しており、96%がオムニチャネルでのサプライチェーン機能を提供していた。これは、取り組みが遅れている企業とは対照的だ。
マーケットリーダー企業は高品質で一体的な顧客体験を提供している傾向が高く、その多くはデジタル化も進んでいる。ところがそれらの企業でも、営業、マーケティング、事業運営、顧客サービス、イノベーション・研究開発などの機能部門が、1つの一貫性のある顧客体験を提供するために組織化されるところまでは至っていない。
その理由はさまざまで、しかも複雑に絡み合っているが、その一部は、抵抗する既存のCXOがそれらの機能部門に対して持っている権限を引き剥がすことが困難であることや、現代の企業を顧客体験を中心として組織化する手法は、比較的新しい課題であり、十分に理解されておらず、実績も足りていないことにある。簡単に言えば、部門間に分断が見られる現在の組織が、あるべき姿からほど遠いことは分かっていても、実際にどうすべきかはまだ分かっていないということだ。