日本マイクロソフトおよびR3は1月、分散型台帳「Corda」をテーマにしたユーザーイベント「Tokyo Corda Meetup」を都内で開催した。Cordaはブロックチェーンデータベースに触発された分散型元帳プラットフォームとして、2016年11月に公開されたOSS(オープンソースソフトウェア)である。
Cordaコンソーシアムには、ゴールドマン・サックスやJPモルガン、国内では三菱UFJフィナンシャルグループなどが名を連ね、今後の金融基盤として注目を集めているが、日本マイクロソフトは日本市場におけるCordaパートナーとして今回のイベントを開催した。
もともと分散型台帳とは、1台のサーバに限らず複数のコンピューターにデータを分散させて台帳を管理する方法である。行政システムに置き換えれば中央集権と地方分権が近いものの、情報格差は生じない。
また、参加者全員が同じ価値記録を保存することで信頼性を確立させる特徴を持ち、これらの技術を分散台帳技術(Distributed Ledger Technology)と呼んでいる。ブロックチェーンも似た特性を持っているが、あくまでもブロックチェーンはDLTを構成する技術の1つだが、R3は「DLTと呼ぶことをあきらめた。言葉の定義は変化するので(Cordaを)ブロックチェーンと呼んでもかまわない」(R3 プロジェクトマネージャー 山田宗俊氏)と述べつつ、既存のソリューションに対す呼称変更を説明した。
左から電通国際情報サービス 金融ソリューション事業部 DXユニット デジタルイノベーション部 ソリューション開発グループ シニアコンサルタント PMP 市川励氏、同DXユニット デジタルイノベーション部 ソリューション開発グループ シニアコンサルタント 山下雄己氏、同DXコンサルティング部 技術グループ プロジェクトディレクターPMP 高木幸雄氏、日本マイクロソフト アーキテクト 廣瀬一海氏、R3 プロジェクトマネージャー 山田宗俊氏、R3 チーフエンジニア James Carlyle氏
DLTを取り巻く環境は刻々と変化し、R3はブロックチェーン業界の変成を踏まえて、現在を第3世代と定義している。ビットコインやイーサリアムなどパブリックなブロックチェーンの登場時期を第1世代、OSSのブロックチェーン基盤であるHyperledger Fabricや、イーサリアムベースのQuorumが登場した時期を第2世代だと説明した。「(第1世代の課題を補うため)プライベートネットワークを持たせたが、相互運用性がないため複数のネットワークが点在する。そのため管理対象となるアセット(資産)が孤立してしまう」(山田氏)
そのためR3はCorDapp(Corda上のアプリケーション)に関する相互運用性を確保しつつ、アセットの移転を可能にするCorda Connectの運用を提唱した。このように同社は、分散型台帳プラットフォームであるCordaはOSS版のCorda Open Source、金融機関などの本番環境に用いる有償版のCorda Enterprise、ノードを実行する多数のコンピュータで構成されたネットワークをCorda Networkと称してきたが、それぞれCorda、R3 Corda -Enterprise Blockchain、Corda Connectに改称する。
ブロックチェーン業界の変成
R3は2017年11月に大手ソフトウェア企業と協力してCordaプラットフォーム上のCorDappを開発する「Cordaパートナーネットワーク」に60社以上の企業が参加していることを発表したが、同社によれば実証実験レベルで参加している企業は140社を超えるという。
そのため公表可能な事例も増加し、今回は3つの運用事例を紹介した。金融向け統合ソリューションを提供する米フィンテック企業のCalypso Technologyでは、FX(外国為替証拠金取引)の取引内容が適応するか確認するプロセスに食い違いが生じる可能性が高いため、取引情報をR3 Corda上で共有している。ミスマッチが発生すると、該当する取引を絞り込み、どのような問題が発生しているかコメントを返すことが可能になるという。R3は「同じプラットフォームで取引=1つの事実を相手と共有し、確認できるため、業務効率の向上につながる」(山田氏)と説明する。
Calypso TechnologyによるR3 Corda導入事例