IDC Japanは2月1日、「2017年 AR/VR市場 企業ユーザー調査」の結果を発表した。同調査は、2017年10月に18歳以上の正社員ならびに自営業者1000人を対象にウェブアンケート方式で実施された。
これによると、VR(Virtual Reality:仮想現実)のビジネス利用意向は、情報通信業以外では今後の意向も含めて10%を超えるケースが少なく、VRのビジネス利用は立ち上がりを迎えたばかりであることが判明した。利用目的に関しては、現在利用しているとした回答者ではマーケティング用途(25.9%)が多かった。これに対し、今後の利用意向者では技術訓練やトレーニング用(20.8%)、技術研究(16.7%)および設計・エンジニアリング(15.3%)が上位に挙げられた。現在採用しているユーザーと今後のユーザーとの用途の違いが明らかとなった。
VRのビジネス利用目的(上位主要項目抜粋)(出典:IDC Japan)
一方、AR(Augmented Reality:拡張現実)のビジネス利用はVR以前の段階にあり、現在はまだ揺籃(ようらん)期であることが分かった。実際、ARではビジネスでの現在利用者で「テレワーク時の会議用」が26.1%でトップだったが、その他は「開発環境の開発と販売」関連が上位を占めた。また、今後の利用意向者でも「技術研究」(13.8%)と並んで「ARコンテンツ開発環境の開発と販売(ハードウェア)」が上位に挙げられた。その結果、ARのビジネス利用は実際のワークフローへの導入よりもコンテンツの開発などを利用目的とするケースが多いことが判明。また、標準化を伴う実際のビジネスでの利用はVRに遅れを取っている現状も明らかとなった。
ARのビジネス利用目的(上位主要項目抜粋)(出典:IDC Japan)
同調査は、現段階ではAR/VRを自社ビジネス利用していないとした回答者にAR/VRの自社ビジネス利用阻害/懸念要因を尋ねている。これによると、外注コストや投資対効果(ROI)の分かりづらさを上げる声が多く、コストに見合うだけのリターンが得られるのかを懸念する声が目立った。
AR/VRはその特性上、体験内容とメリットを言語化することが難しいとされる。実際の導入に当たってもこの壁をいかに克服するかという点が課題であるとIDCは見ている。ただし、AR/VRを何らかの形で個人的に体験したことのある回答者はビジネス利用の障害要因などについて具体的に回答する傾向が強く、その点ではAR/VRのビジネス利用について「我が事化」を能動的に進めているとしている。今後の市場拡大に当たり、AR/VRのユーザー体験をいかにして拡大していくかが最大の課題であるという。