アプリケーションの性能がビジネスに大きな影響を与えることはいうまでもない。消費者、取引先が日々アプリケーションを利用しており、使い勝手や速度などで体験が劣るとビジネスチャンスを逃すことになる。アプリケーションの性能をモニタリングするAPM(Application Performance Monitoring)の草分け的存在がAppDynamicだ。
2017年初、IPO直前だった同社をCisco Systemsが37億ドルの巨額をはたいて買収したことで一躍知られるようになった。AppDynamicsの共同創業者で、CTOを務めるBhaskar Sunkara氏に、APMの現在と今後の方向性、Cisco Systemsとの関係などについて聞いた。
「30〜40%の時間を顧客に費やす」というAppDynamicsのCTO、Bhaskar Sunkara氏。顧客がやりたいことだけでなく「顧客がまだ考えていないこと、見えていない問題も考えている」と語る。
ーー37億ドルという巨額で買収されましたが、高い評価の理由は?
当時われわれは、IPOに向けて準備中で、高い評価額をもらっていました。Ciscoはわれわれが持つ機能と将来性に高い価値を感じたのでしょう。Ciscoのビジネスをもっとパワフルにすると判断したのだと思います。評価額は売上高の17倍という異例のものになりました。
Ciscoはインフラ、データセンター中心のポートフォリオを持ちます。ネットワーク、セキュリティ、コラボレーション、IoTなどですが、これらのインフラやネットワーク上で動くアプリケーションからインテリジェンスを得るという点で大きなギャップがありました。インテリジェンスなしにLOBと連携は難しく、そこに価値を感じたのでしょう。
あらゆる企業にとって、競争で生き残るための方法はソフトウェア主導、アジャイルになることです。アプリケーションの性能、アプリケーションがどのようにビジネスを結びついているのかを理解していなければ、的確な意思決定はできません。アプリケーションインテリジェンスはこれを実現します。
ーー買収から1年が経過しますが、買収後の変化は?
2017年3月に買収が完了し、それ以降も独立した事業部として運営しています。われわれは自分たちのロードマップを実行しています。
Ciscoの一部となることで、Ciscoが抱える2万人もの営業部隊を活用できます。Ciscoは我々の研究開発にも投資しており、ロードマップを加速できます。
ーー現在の戦略は? 最新版の機能について教えてください。
2010年に販売を開始し、最初の数年は顧客の獲得にフォーカスしました。現在、顧客が増えてきたところで、成熟した実装例を増やすことに注力しています。
モニタリングは技術だけではなく、文化的な要素があります。ツールの実装にとどまらず、行動を変えることなくして成功はないのですが、これまでの行動を変えて新しいツールを受け入れることは簡単ではありません。そこでAppDynamics技術のメリットを感じてもらうことを重視しています。
戦略としては、企業における小さなグループでAppDynamics技術を実装して成功させ、これをユースケースとして他のチームや企業全体に拡大する、というものです。実際に社内のあるチームがAPMを利用してうまくいっているという例を見るとモチベーションが高まります。これにより全体に広げていきます。
顧客はデジタルトランスフォーメーションにおいて、パートナーを求めています。変化は複雑であり、デジタルトランスフォーメーションも複数のフェーズで進める必要があります。われわれはこれを支援する機能をアジャイルに提供していきます。
ーー最新の機能について教えてください。
2017年11月にバージョン4.4をリリースしました。目玉は、「Network Visibility」です。アプリケーションに統合したネットワークのモニタリングを提供する機能で、2つのサービス間のネットワーク遅延の原因などを知ることができます。アプリケーションのオペレーションに共通したプラットフォームとなるもので、ネットワークのモニタリングではありません。
問題発生時、どこで問題が起こっているのかを把握する必要があります。すぐに把握できなければ優先順位をつけて解決するトリアージの時間を短縮できません。この機能は以前から開発しており、バージョン4.4で一般提供(GA)となったことを嬉しく思っています。
Network Visibilityにより、どこで問題が発生しているのかを早急に把握して対策を取ることができる。4.4ではこの他、IoTモニタリングも導入しました。