海外コメンタリー

オープンソース誕生から20年--プログラミングやビジネスをどう変えたか - (page 3)

Steven J. Vaughan-Nichols (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2018-02-09 06:30

 Stallman氏はオープンソースに激怒した。同氏は次のように述べている。

 2つの用語は、ほとんど同じソフトウェアの手法・カテゴリを説明するものだが、その視点はまったく異なる価値観に基づいている。オープンソースは開発手法であり、フリーソフトウェアは社会運動だ。フリーソフトウェア運動にとって、フリーソフトウェアは倫理的な規範であり、ユーザーの自由に対する欠くべからざる敬意を意味している。それに対して、オープンソースの理念は、ソフトウェアを改善する方法の観点から、実用的な意味でのみ問題を捉えている。オープンソースは、フリーでないソフトウェアは、現実の問題を解決するソリューションとして劣っているとしか言っていない。オープンソースに関する議論のほとんどは、正しいか間違っているかには言及しておらず、人気と成功にのみ関心を向けている。

 Stallman氏は、オープンソースはビジネスにこびへつらっており、コードに自由にアクセスする個人の自由に関する視点をなくしてしまっていると考えている。20年経っても、同氏の怒りは収まっていない。

 Stallman氏は最近、筆者あてのメールで「私や、私の業績や、フリーソフトウェア全般を『オープンソース』という言葉と結びつけられることがあるが、これはよくある間違いだ。この言葉は、1998年にフリーソフトウェア運動の理念を拒んだ人々が導入したスローガンだ」と述べている。また別のメッセージで、同氏は「私は『オープンソース』を拒否した。なぜなら、それは『フリーソフトウェア』の自由についての考えを葬り去ることを意味していたからだ。オープンソースは役に立つフリーなプログラムのリリースを促進したが、そこには、ユーザーが自らのコンピューティングをコントロールできるべきだという考えが欠けている。われわれソフトウェア解放運動家は、『自分たちが変更できない、あるいは共有できないソフトウェアは不当な存在であり、そこから脱してわれわれのフリーな代替ソフトウェアに移行すべきだ』と主張している。しかしオープンソースの主張は、『ユーザーにコードを変更することを許せば、バグを直してもらえるかもしれない』ということだけだ。言っていることは間違ってはいないが、主張が弱すぎるし、より重要な論点を避けている」とも述べている。

 理念的な対立はともかく、オープンソースは確かに、実践的なソフトウェア開発モデルとして広く受け入れられた。オープンソースのCRM SaaSを提供しているSugarCRMの最高経営責任者(CEO)Larry Augustin氏は、もっとも早い時期にオープンソースを商用ソフトウェア事業で利用した人物の1人だ。Augustin氏は、オープンソースソフトウェアを基盤とした事業が可能であることを証明した。

 ほかの企業も、すぐにこのモデルを取り入れた。CanonicalRed HatSUSEなどのLinux企業以外に、IBMOracleなどのテクノロジ企業もオープンソースを採用した。これが、オープンソースの商業的な成功につながった。最近では、WalmartやVerizonなどの、一般にオープンソース企業とはまったく認識されていない企業も、オープンソースプログラムに依存しており、独自のオープンソースプロジェクトを進めている。

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