企業ネットワークが激変期を迎えている。変化を促進している最大の要因はビジネス環境の変化だ。では、今後10年の成長機会をとらえ、ビジネス成長を確かにするネットワークインフラのこれからとは何か。2018年1月23日に開催されたZDNet Japanネットワークインフラセミナーでは「予測が難しいビジネス環境に合ったネットワークインフラのあり方を再考する」をテーマに講演が行われた。
デンソーがDX推進のビジョンを解説--「カギを握るのはサービスメッシュ」
基調講演には、デンソー 技術開発センター デジタルイノベーション室プロジェクトマネージャーの小泉清一氏が登壇。「デジタルトランスフォーメーションに必要なネットワークの要件とは」と題し、デンソーが注目するネットワーク技術と同社の取り組みを紹介した。
世界的な自動車部品メーカーとして連結売上高4.5兆円、200のグループ会社と15万人の社員を擁するデンソー。同社では「自動車産業は100年に一度の転換期にある」という認識のもと、デジタルトランスフォーメーションに積極的に取り組んでいる。
小泉 清一氏
株式会社デンソー
技術開発センター
デジタルイノベーション室
プロジェクトマネージャー
「注力分野は電動化、ADAS/AD、コネクティッド、Factory Automationなどです。自動車業界のパラダイム変化のなかで、第二の創業期ととらえ、すべての人が安心して共感できる社会づくりを目指しています」(小泉氏)
取り組みの推進役の1つが2017年4月に新設されたデジタルイノベーション室だ。同室では「デザイン思考・サービスデザイン」「Connected IoT Platform」「アジャイル開発・内製化」という3つの道具を武器に「Mobility as a Service(MaaS)」の開発と運用を推進している。
「デジタルトランスフォーメーションには、ネットワークを意識せずにサービスを提供・変更できるアーキテクチャが必要です。そこで必要になるのが、分散システム技術とネットワーク制御技術です。デンソーではこれらの技術を発展させたサービスメッシュなどの統合制御技術を活用していこうとしています」(小泉氏)
分散システム技術は、2000年台初頭のEDI、Mobile Agent、GRIDといった技術潮流からきている。一方、ネットワーク制御技術の源流はActive Network、MPLSなどに遡ることができる。2010年頃からは、これらはSOA(サービス指向アーキテクチャ)、コンテナ仮想化、マイクローサビス、SDN、NFVなどに一足飛びに発展する。さらに一足飛びに発展したのがサービスメッシュという位置づけだ。
小泉氏は技術トレンドを振り返りながら、現在デンソーでは、Envoy(Lyft)、Istio、Linkerdといったマイクロサービスの連携技術をつかって、サービスメッシュ構築に取り組んでいることを紹介した。
最後に「2018年はサービスメッシュの年です。事業のデジタル化を加速するサービス提供者志向アーキテクチャの整備が進む1年になります」と展望を示し、取り組みをさらに加速させていくとした。