最近発表された中国の中産階級のレポートをまとめてみると、これがおそらく日本人にとって予想外であろう数字が並んでいる。これを紹介したい。
スイスのCredit Suisse Research Instituteが発行したCredit Suisse Global Wealth Databook 2017では、1万ドルから10万ドルの資産を所有する人々を中産階級と定義しているが、世界全体のうち中国人が占める割合は2000年の12.6%から、2017年の35%に上昇したとしている。また2022年には世界の中産階級が12億人に達し、そのうちの40%が中国人となるという。
中産階級という本題からは外れるが、同レポートによれば、中国の家庭資産は17年間で6倍に増えたという。また100万ドル以上の資産を所有するいわゆるミリオネアは、世界の5%に相当する200万人だという。
中国の調査会社のiResearchと投融家から共同で中国の中産階級の現状に関するレポート「新中産人群生活態度及網絡理財安全行為研究報告」を発表している。レポートでは中産階級の定義として、「上層と下層の中間の人々」「大卒以上」「公務員・私企業問わずホワイトワーカー」「北京、上海、広州、深センの一線都市とそれに続く二線都市に集中」「未婚の個人収入は15万元(約258万円)以上。既婚の家庭収入は一線都市で30万元(約519万円)以上、二線都市で20万元(約346万円)以上」としている(ここでいう収入は月収ほか、ボーナスや家賃収入なども含む)。しばしば日本では「家庭年収300万円」の話が出てくるが、それ以上の人々が中産階級となる。
この定義の中産階級の平均個人月収は一線都市で2万5862元(約44万5000円)、二線都市で1万7984元(約31万円)となり、家庭月収は一線都市で4万3529元(約75万円)、二線都市で34403元(約59万円)となる。年齢では、一線都市では35歳までに集中するが、二線都市では30代後半に集中する。そのため中産階級家庭の子供の年齢も、一線都市のほうが若く、ふたりっ子が多い傾向となっている。
マイホームは一線都市では86.9%、二線都市では93.8%が所有する。また一線都市では4割以上が2部屋以上所有している。住宅平均資産は、一線都市で719万元(約1億2360万円)、二線都市で502万元(約8630万円)となっている。マイカーに関しては、一線都市で81.5%、二線都市で88.2%が所有し、所有する車両の平均価格(複数台所有の場合は高い方)は、一線都市で31万9000元(約550万円)、二線都市で25万9000元(約445万円)となっている。
年収10数万元~40万元の所得を問わず、2割強を毎年貯金し、投資に回している。ハイリスクハイリターン派は10.4%と少数派だ。アントフィナンシャルのアリペイを残額を活用した投資信託「余額宝」などのネット投資の平均利用期間は27.7か月で、全投資額におけるネット投資の割合は平均で27.3%となった。
また大学に行けるくらいだから、その両親も安定した収入がある。71%が両親には生活に十分な収入があるとし、15%がそれ以上の余裕ある収入があるとしている。また71%が両親には医療保障があり、21%はそれとは別に商業保険があるとしている。それでも働き盛りの世代の半数以上が、老いた両親を近くで面倒をみたいとしている。
一方子供については、78.9%が学校以外に年に1万元(約17万2000円)以上の教育費を費やしているとした。2万元(約34万4000円)以上が52.3%、3万元(約51万6000円)以上が26.6%だという。ふたりっ子ともなれば、家庭の負担額はかなりものとなろう。
そんな中産階級の楽しみ(複数回答可能)は、「ネット(39.7%)」「テレビドラマをみる(29.1%)」「フィットネス(26.5%)」「ネットショッピング(25.3%)」をはじめとして、質素なものが多い。また海外旅行に行きたいという熱は高く、9割以上が年に1度は海外旅行に行っているとのこと。その行先は日本が最も高く55.7%。以下韓国(45.3%)、東南アジア(42.5%)、オーストラリア(32.0%)、アメリカ(31.4%)、西欧(25.6%)となった。
- 山谷剛史(やまやたけし)
- フリーランスライター
- 2002年より中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、アセアンのITや消費トレンドをIT系メディア・経済系メディア・トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に「日本人が知らない中国ネットトレンド2014 」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち 」など。