MicrosoftがLinkedInを買収すると発表した際、多くの人々はLinkedInが「Microsoft Azure」のクラウド環境に移行するのは時間の問題だと考えていた。
オレゴン州にあるLinkedInのデータセンター
しかし、その予想は現実化していない。また、近い将来においてその方向に向かって話が進んでいくとも感じられない。
LinkedInのサービスがAzure環境に移行していないというのは、ある意味において驚くほどの話ではない。Microsoftは「Office 365」をAzure環境に移行すると何年も前から述べているが、これまでのところ実現はしていない。また、「Xbox Live」の移行も実現していない。同社は、Office 365やXbox Liveにおける既存のレガシーベースをそのままにしておく(自社のデータセンターで運用している)一方で、これらの新機能をAzureサービスの形態で実現することに注力しているようだ。
とは言うものの、ここ数年にわたって同社が、できる限り多くの独立系ソフトウェアベンダー(ISV)やサービスプロバイダーにAzureを「推奨クラウド」として採用してもらえるよう取り組んできたという事実を考えると特に、LinkedInのデータセンターが独立して運用されている点は驚きだ。Microsoftは、Azureの有用性を示す根拠とすべく、Adobe SystemsやSAP、Boxといった企業とのパートナー関係を強固なものにしてきている(そして売り込んできている)。
Microsoftが2017年の初めに、同社の最高技術責任者(CTO)としてLinkedInのインフラ担当シニアバイスプレジデントKevin Scott氏を任命した際、筆者はこの人事がLinkedInとMicrosoftのクラウドを一本化するというMicrosoft上層部の意向の表れなのかどうかという疑問を抱いた。しかし、その答えはノーと言えそうだ。
2017年4月、LinkedInは当面の間、LinkedInのサービスを自社固有のインフラ上で管理、統制し続ける計画だと公表した。また、LinkedInのエンジニアリング担当バイスプレジデントであるSonu Nayyar氏は、2018年2月1日付けの「Lessons Learned from LinkedIn's Data Center Journey」(LinkedInのデータセンターに関する経緯から学んだこと)というタイトルの記事で、LinkedInが自社の独立したデータセンター上で運営を続けると記している。
Nayyar氏は、LinkedInが自社のデータセンター戦略を変革する必要に気付いたのは2012年だったと説明している。
同氏は「サードパーティーのデータセンターベンダーに依存するのではなく、自社のデータセンターを運用、管理していく必要があった。これは極めて重要な意思決定であり、『自らの運命を統制する』という、われわれにとっての新たな原則を生み出すものとなった」と記している。
LinkedInは、マルチコロケーションでの運用を決定し、複数のデータセンターからアプリケーションを提供することにした。そして、当時は独立系の企業であった同社は、2013年から2015年にかけて毎年新たなデータセンターを開設していった。同社はまた、「Project Altair」というかたちで結実する、ハイパースケールに向けたデータセンターの構築と移行、推進を決定した。同社の目指すデータセンターは、「アップグレード中であっても、コアに割り込みをかけることなく、あるいはネットワークの根本的なアーキテクチャに手を加えることなく水平スケーラビリティを実現できる」というものだ。2016年にLinkedInは、Project Altairの設計に基づいたデータセンターをオレゴン州に開設した(記事冒頭の写真)。