企業は、物理的な資産やプロセス、業務の「デジタルツイン」を構築することで、システムを最適化し、業務を効率化してコストを削減できるようになるかもしれない。
調査会社であるGartnerによれば、「デジタルツイン」とは物理的な実体をデジタルで表現したものであり、これには実体が生み出すデータや、そのデータを監視する能力も含まれている。デジタルツインは変化に対する素早い対応を可能にし、特に資産利用の最適化や予防的メンテナンスに威力を発揮する。
モノのインターネット(IoT)の到来もデジタルツインの導入事例が増えている要因の1つだが、Gartnerは、この概念が適用できるのは製造業だけではないと主張している。同社によれば、この概念は人やもの、場所、複雑な環境など(例えば建物や工場、あるいは都市に至るまで)にも適用できるという。
海洋土木・施設建造会社McDermott Internationalの最高情報責任者(CIO)兼最高デジタル責任者(CDO)Akash Khurana氏は、デジタルツインは企業の業務の進め方や、顧客との向き合い方を変容させると予想している。
「デジタルツインの作成は、すべてのCIOにとって重要な検討事項だ」と同氏は言う。「社外に出て顧客と対話し、人々にとっての価値を生み出すために、デジタル変革をどう活用できるかを考えるべきだ」
McDermottのデジタルツインは、同社が石油・ガスプラットフォーム施設を設置した後に、顧客に提供されるコンピュータモデルだ。その狙いは、将来的な業務やメンテナンスの効率を向上させることにある。
概念の定義
Gartnerは、2021年には産業分野の大企業の半分が、効率向上のためにデジタルツインを利用するようになると予想している。Khurana氏は、この概念との相性がいい企業と、そうでない企業が出てくると考えている。「どの業界も少しずつ異なっている。どこででも通用する共通のアプローチは存在しない」と同氏は言う。
Khurana氏は「(デジタルツインを十分に活用するには)その業界のその企業の活動について調べる必要がある」と述べている。「成熟度は重要だ。現在の自社の業界内での位置づけや長期的な目標についても、率直な議論が必要となる。また、成長曲線に沿って前進するために必要な手順を理解し、明確化しなくてはならない」