スイスのVeeam Software(日本法人はヴィーム・ソフトウェア)は、サーバ仮想化環境とクラウド環境を中心に、データバックアップやレプリケーションといったデータ保護のためのソフトを提供しているベンダーだ(関連記事:マルチクラウドで可用性を担保--データ保護のVeeam)。特に、「データを確実かつ素早く復元して、ビジネスを止めない」ことをミッションに掲げている。
「仮想化環境を簡単にバックアップできる」という特徴から、まずはSMB(中小企業)市場での導入が先行した。昨今ではFortune 500に名を連ねる企業への導入が進んでいる。直近の売上(2017年12月期)は8億2700万ドルで、前年比で36%増えた。データ保護ソフト全体では年率5%程度の伸びでしかなく、他社からのリプレースが進んでいるという。
ヴィーム・ソフトウェア 執行役員社長の古舘正清氏
日本も、グローバルと同様に大企業向けの営業体制を強化する。日本法人を作って2年が経ったが、これまでは販売代理店を介したSMB市場への販売が主だった。今後は、大企業やクラウドサービス事業者に向けて専任の営業部隊を作る。2017年12月には、日本法人の社長に、日本IBM、日本マイクロソフト、レッドハット、 F5ネットワークスジャパンを経験した古舘正清氏を任命した。
日本法人社長の古舘氏によると、ユーザー企業は、5年に1回のITシステム更改のタイミングで、データバックアップソフトを見直す。「ユーザーが使っているデータ保護ソフトは、システムごとにサイロ化して乱立している。仮想化環境やクラウドを含めて一元管理できるVeeam Software製品にリプレースしている」(古舘氏)
復元できなければバックアップする意味がない
Veeam Software製品の最大の特徴として古舘氏が挙げるポイントが、「ビジネスを止めないアベイラビリティ(可用性)」だ。システムに障害が発生した際に、バックアップデータを使って確実にシステムを復元できることと、ビジネス停止時間をできるだけ短くすることを、ミッションとして掲げている。
「従来は、保険としてバックアップを取っているだけで、実際にトラブルが発生した際に、すぐに戻せるわけではなかった。中には、戻してみたものの、データの整合性がとれず、データを元通りにするのに1週間かかった例もある。実際にユーザーと話していると、4割のユーザーはデータを戻せないトラブルに見舞われている」(古舘氏)
Veeam Software製品では、データを確実かつ素早く復元する方策として、大きく2つの特徴を持っている。
まず、データの復元を確実に成功させるため、バックアップ済みのデータによってシステムを起動できるのかどうかを事前に確認するための検証環境を用意している。あらかじめ検証環境で起動できることを確認した上で、本番環境に復元できる。「本番環境にデータを復元したが、システムが起動しない」というトラブルを回避できる。
次に、必要なデータを素早く復元できるように、システム単位だけでなく、ファイル単位やアイテム単位でもデータを復元できるようにしている。これなら、システム全体を復元しなくても、必要なファイルやアイテムだけを素早く復元できる。例えば、「消してしまったメールを復元したい」といったケースに使える。