激戦区の中堅中小市場で存在感を発揮できるか
では、日本オラクルの今回の“クラウド攻勢”は果たして奏効するだろうか。
国内データセンターについては、パブリッククラウドサービスのグローバルベンダー“ビッグ3”と目されるAmazon Web Services(AWS)、Microsoft、Googleが既に設置済みで、MicrosoftとAWSは東京だけでなく大阪にも設けている。さらにGoogleも先頃、現在の東京に加えて2019年に大阪へも開設することを発表した。
こうした状況からすると、オラクルの動きが遅いことは明らかだ。ただ、同社の既存顧客にとっては、同社のクラウドサービスが競合他社に匹敵するコストパフォーマンスを提供してくれるのであれば、クラウドも同じベンダーのサービスを選択するだろう。冒頭のObermeier氏の発言には、そうした背景と自信がうかがえる。ただし、新規顧客を獲得していけるかどうかが注目されるところだ。
その意味では、中堅中小企業向け事業の強化は日本オラクルにとって、新規顧客獲得の重要な戦略となる。実は、同社は長年にわたって中堅中小企業向け事業を手掛けてきたが、データベースソフトをはじめとした同社の製品・サービスの対象が大手企業を中心としたものというイメージが強いこともあって、これまでなかなか浸透しなかった。それが今回、SaaSを中心としたクラウドサービスによって突破口が開きつつある状況だという。
ただ、この分野も今後、競争が激しくなるのは必至だ。例えば、オラクルとともにグローバルエンタープライズソフトベンダーの代表格であるSAPも中堅中小企業向け事業に注力する姿勢を打ち出している。その具体的な動きは、2017年8月3日掲載の本コラム「中堅中小企業向け事業に注力するSAPジャパンの“本気度”」を参照いただきたい。
また、日本マイクロソフトも2017年11月、中堅中小企業向けと銘打って「Microsoft 365 Business」を投入。既に広く浸透しつつある「Office 365」の勢力を一層加速させようという構えだ。さらに、中堅中小企業向け市場には日本の有力なソフトベンダーもひしめいている。
こうした中で、Oracle Digitalが確固たる存在感を発揮していけるかどうか。大いに注目しておきたい。