GDPは2021年までに約11兆円増加--MS、DX推進状況を発表 - (page 2)

阿久津良和

2018-02-23 15:23

 IDC Japan リサーチバイスプレジデント 中村智明氏は今回の調査結果を紹介する前に「DXのかけ声は進んでいるが、前向きに取り組む企業は少ない」と語る。同社は「株主ではなく顧客体験の向上を主眼とする企業を『デジタルネイティブ企業』」(中村氏)と定義しているが、今回調査対象となったのは、各種ITシステムを構築・活用し、デジタルサービスの提供と自社自身がDX推進していると認識する企業だという。

 最初に取り上げたのはDXを推進する企業と消極的な企業の差をアジアの某銀行を例に示したグラフだ。両企業の売り上げ差は43%にもおよび、13億ドルの利益差が生じている。アジアで先進的な取り組みを行う"リーダー企業(103社)"と後追いの立場にある"フォロワー企業(1457社)"の差も著しい。顧客継続率は2.2倍、生産性向上は2.1倍、コスト削減は2.4倍の開きがあり、「2020年まで同様の傾向が見られる。DXへの取り組みは強制ではないものの、企業は結果を踏まえた方針を選択すべき」(中村氏)だろう。


IDC Japan リサーチバイスプレジデント 中村智明氏

 興味深いのはアジアのリーダー企業と日本企業(150社)の比較だ。スキルやリソース不足、セキュリティ脅威の拡大は共通課題だが、IT技術の適切な見極め(2.2%差)やITパートナーの選定(0.9%差)とわずかに立ち後れている。KPI(主要業績評価指標)についても、データを用いたビジネスモデルの構築は20%差と大きく、プロセスやサービス効率(10%差)、製品・サービスの革新頻度(10%差)と開きが大きい。

 ビッグデータ分析もアジアのリーダー企業は18.6%が重点投資対象とみているが、日本企業は11.5%にとどまる。これらの状況を鑑みると「アジアの常識は日本では(まだ)非常識」(中村氏)と言えるだろう。今回の調査結果によればDX推進はアジア企業で効果的で、「アジアのリーダー企業は利益率向上、コスト削減、生産性向上、生産・運用時間の短縮、顧客獲得時間の短縮といった5分野でDX効果を認識している。3年後となる2020年も現実的な数値を示しているが、日本企業は(DX効果で著しく成長するという見方を持っており)楽観的だ。日本企業の方針に危うさを感じる」(中村氏)と警鐘を鳴らす。

 これらの背景にあるのは企業特性だと中村氏は指摘した。例えばアジャイルアプローチに能動的かという設問に対して、アジアのリーダー企業は41%、アジアのフォロワー企業は31%、日本企業は39%と比較的高い。だが、組織間で共創し、共創グループを生み出す土壌があると回答したアジアのリーダー企業は78%、アジアのフォロワー企業は61%、日本企業は59%。これらの結果から、IDG Japanは「『予算は出さない。でも頑張れ』という声が聞こえてくる。日本企業は文化的側面から変化しなければならない」(中村氏)と日本の企業を鼓舞した。

 今回の調査結果について日本マイクロソフトは、「顧客との対話で感じていたため、ビッグデータの利用に積極的ではない部分は既に感じていた。他方でセキュリティ対策に関しては、日本企業の保守的な部分が顕著。攻めや変革については消極的だ」(平野氏)と述べつつ、「ビジョンの策定」「課題解決」「コミュニティ」の3テーマで取り組むという。

 Microsoft/日本マイクロソフトにおける自社の変革事例を共有し、顧客に対して変革支援するデジタルアドバイザー部隊を用意する。課題解決に対しては、Microsoft開発チームと連携したコーディングレベルの技術支援などを行うHackfest(ハックフェスト)やソリューションマッチングを提供。コミュニティに対してはユーザー企業のCDO(DX推進に焦点を置いた役員)を中心としたコミュニティ「D-Lex」を設立し、経験課題を共有するという。なお、今回の調査結果はPDFで確認できる。

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