今日のポイント
- あるか? パウエル・プット。FRB新議長のパウエル氏に期待集まる
- 日経平均も反発しているが、上値重い
- 今週の日経平均は上値の重い展開か?パウエル議長の議会証言が鍵
これら3点について、楽天証券経済研究所長兼チーフストラテジストの窪田真之氏の見解を紹介する。
あるか? パウエル・プット:FRB新議長のパウエル氏に期待集まる
先週は、「パウエル・プット」への期待(※注)が高まり、米国株は元気を取り戻した。
※注:パウエル・プットへの期待:株が急落したとき、「米国の中央銀行であるFRBが、金融緩和など株安歯止め策を発動してくれるはず」という期待。実際、FRBは過去、株安局面で金融緩和や資産買い取りなど発動してきた。「プット」は金融派生商品の一種で、下落局面で下げのダメージを緩和する保険の役割を果たす。「FRB議長がプットのような役割を果たす」という期待を込めて、その時々のFRB議長の名前をつけて、「グリーンスパン・プット」「イエレン・プット」などの呼び名が使われてきた。2月3日にイエレン氏の後を継いでFRB議長に就任したパウエル氏の手法には未知の部分が多いが、最近「株安局面では金融緩和に動く」と期待が高まり、「パウエル・プット」という言葉が生まれた。
パウエル議長は、就任時に金融政策の方針として、2つのメッセージを発信した。「利上げを続ける」ことと、「金融市場に波乱があるときは、それに配慮する」ことである。市場は、どちらを重視するか知りたかったのだが、パウエル氏は、言質を与えるような発言はせず、ただ2つの可能性を当たりさわりなく述べただけだった。
パウエル議長の政策にいろいろな思惑が広がる中、金融市場を安心させるニュースが1つ出た。NYダウが急落した直後の週に、FRB(連邦準備制度理事会)がMBS(住宅ローン担保証券)の大量購入を行ったことが分かったことである。1週間で110億ドル(約1兆1700億円)買い付けていた。
FRBは、イエレン前議長のもとで、昨年9月に保有資産(米国債や住宅ローン担保証券)の縮小(量的な金融引き締め)を、少しずつ進める方針を決めている。今回の買い付けは、それに逆行する動きである。NYダウの急落を目の当たりにして、緊急で資金供給(保有資産の拡大)を実施したことが分かった。
この事実が伝わると、「パウエル議長は、株価が急落したら金融緩和してくれる」という、いわゆる「パウエル・プット」の期待が一気に高まった。
パウエル・プットの期待が高まると、VIX指数(恐怖指数)は急低下し、NYダウは急反発した。
NYダウ日足:2017年10月2日~2018年2月23日

ただ、パウエル・プットの期待には、副作用もあった。ドル安(円高)である。パウエル議長は表向き利上げ積極派だが、株安局面では金融緩和を復活させるくらいハト派の顔もあると市場が思い込んだことから、ドルの先高感が低下しドル安が進んだ。
ドル/円為替レート推移:2017年10月2日~2018年2月23日
