ハードから読み解くITトレンド放談

AIや仮想通貨ブームで沸き立つGPU(前編)--市場とNVIDIAの動き

山本雅史

2018-02-27 06:00

グラフィック以外の処理に主眼が置かれるGPU

 2010年代に入り、コンピューティング環境が徐々に変化してきている。以前は、CPUのパフォーマンスが非常に重視されていたが、CPUだけでは処理に膨大な時間がかかるような人工知能(AI)や暗号解析などの用途が増えてきた。特にAIに関しては、機械学習やニューラルネットなど、大量のデータをベースに知識ベースを構築していく方法が主流になってきている。

 ただ、機械学習やニューラルネットなどは膨大な演算を行うため、CPUで処理するには、データ量が多くなるにつれ、負荷が高くなり、処理に時間がかかる。そこで、最近注目されているのが、GPU(グラフィック プロセッシング ユニット)をAIの処理に利用しようというものだ。

 また、最近ではGPUを仮想通貨のマイニング(採掘)に利用することが増えている。仮想通貨は、発行主体(中央銀行など)が存在しないため、全ての取引を個々の取引ごとに、正しいか証明していく必要がある。このため、仮想通貨では「ブロックチェーン」というテクノロジを利用して、全ての取引台帳データを公開し、取引データが正しいのかなどを証明していく。マイニングを最初に正しく行うことで、マイナー(採掘者)には、報酬として仮想通貨が支払われる。

 マイニングは膨大な計算が必要になり、CPUでは1つの取引を証明するのにも膨大な時間がかかることから、GPUを利用することで高速に行えるようになった。マイニングの報酬が最初に証明をしたマイナーだけに支払われる点では、マイニング処理を高速化しないと、マイナーが報酬を得られないわけだ。

 最近では、GPUよりもFPGA(Field Programmable Gate Array:プログラミング可能なLSI)や特注のASICなどを利用することで、GPUよりも高速にマイニングができるようになってきている(後編で詳述する)。

 そもそもマイニングには、多大なコンピューティングシステムの初期投資、24時間連続稼働、消費電力料などを必要とする。このため、黎明期に個人が行っていた処理は、現在では企業などが専用のデータセンターを用意して行う「マイニングファーム)に変わってきている。なお個人でも、パブリッククラウドサービスのGPU付きの仮想マシンを使用することで、膨大なコンピューティングリソースを自ら用意することなくマイニングを行えるようになっている。

 ただ、仮想通貨のマイニングだけでは、長期間にわたってマイニングファームを維持していくのは難しいだろう(仮想通貨の価値が高騰していないと、コストに見合わない)。一方で、ブロックチェーンというテクノロジは、取引の正当性を証明していくという点から、仮想通貨だけでなくさまざまな分野でマイニングファームとして利用されるようになるだろう。


DMMが石川県金沢市に構築したマイニングファーム。ラックにマイニング用のコンピュータが並んでいる

GMOが開発したマイニング専用チップを使ったカード。GMOではチップを外販せずに、自社のマイニングファームで使用する予定だ

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