ハードから読み解くITトレンド放談

AIや仮想通貨ブームで沸き立つGPU(後編)--NVIDIAに追従するAMDとIntel - (page 4)

山本雅史

2018-03-05 06:00

新たなチップ「FPGA」の活用

 Intelは、AI専用チップ以外にFPGA(Field Programmable Gate Array)に関して膨大な投資を行っている。2015年にFPGA大手のAlteraを167億ドル(当時のレートで約2兆円)で買収した。

 FPGAは、プログラミングが可能なLSIといえば分かりやすいだろう。開発者は、ハードウェアロジックをFPGAで自由に構成できる。つまり、CPUのソフトウェアでは時間のかかる処理をFPGAでハードウェア化することで高速に処理できる。

 開発者は、FPGA購入後にプログラミングして、独自のハードウェア構成を構築する。以前はASIC(カスタムLSI)を作成する前に、ハードウェアの動作テストなどに使われていたが、FPGAに入るトランジスタ数が増えるにつれて複雑なハードウェアロジックが構築できるようになった。また、FPGA自体の動作クロックもアップしてきたことで、ASICを作成するにはコストや時間がかかることから、短い期間で少量のハードウェアロジックを構築するのにはFPGAがぴったりだ。

 FPGAへの注目が集まったのは、MicrosoftやGoogleがパブリッククラウドで利用したことが背景にある。特にMicrosoftは、自社の検索エンジン「Bing」のページランク処理にFPGAを使うことで30%以上高速化した。一方でページランク処理に要するサーバ数を半減できたと説明している。

 また仮想通貨のマイニングでは、FPGAでマイニングを行うツールなども提供されている。FPGAでのマインニングは、マイニング専用のカスタムチップと同じような性能を持つため、GPUよりも高速なマイニングが可能になっている。

 FPGAの特徴は、ASICではカスタムチップ化すると一つの用途にしか使えないが、FPGAであれば開発者がロジックを独自に構成できる点だ。またカスタムチップなどは、最低ロットが数千、数万という規模になるが、FPGAなら数個単位で作ることができる。Intelは、Altera買収後に、XeonにFPGAを内蔵させたプロセッサを開発している。ただし、FPGAを内蔵したXeonの提供は、パブリッククラウドなどを運用している大手のクラウド事業者やデータセンター事業者に限られている。

 しかしFPGAは、プログラム処理を高速化するが、ロジックのプログラミング自体は難しい。FPGAを使うには、ソフトウェアやサービスの内容を理解しているハードウェアエンジニアが必要になる。ソフトウェアのどの部分をFPGAによってハードロジック化していくのかなど、システム全体でハード化する部分を判断する必要があるためだ。開発ツールも、ASIC設計のツールなどが使われているため、ソフトウェアエンジニアにとっては、あまりにも分野違いで使いこなせない。このように、FPGAを使えるエンジニアをどれだけ増やしていけるかが、FPGAが普及していくキーポイントになる。


FPGAはソフトウェアのロジックの一部をハード化することで、処理を高速化する。ただし特殊な開発環境やノウハウが必要なため、FPGAを利用したアプリケーションはまだまだ少数だ(Intelのウェブサイトより)

 Googleなどでは、機械学習に使うTensorFlowを処理するFPGAを開発しテストした後、ASIC化して「TPU(Tensor processing unit)」を開発した。当初TPUは、Googleの内部だけで利用されていたが、最近ではGoogleのパブリッククラウド GCP(Google Cloud Platform)で一般ユーザーがTPUを利用できるようになってきている

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