クラウドで切り開け“超ローカル新聞”の未来--岩手・岩手日日新聞社 - (page 4)

編集・構成 怒賀新也(編集部)

2018-03-17 07:30

 RAPiC 代表取締役 水沼正樹


 電子新聞プロジェクトを始めたのは2011年震災直後。NCRIの津田氏から「これから地方の新聞会社はもっと大変になる。今のうちに電子化しないと生き残れなくなって、地方のその場所にしかない貴重な情報ソースが失われてしまう」との話を聞き、ファーストユーザーの東海新報社さんにアポを取り付け、プロジェクトがスタートしました。今回、セカンドユーザーである岩手日日新聞社の電子化が完了したことは、裏方で協力した私にとってもうれしいことです。

 今回のプロジェクトでは、システムの運用やインフラ関係についてアドバイスをする立場のオブザーバーとして参加させていただきました。クラウドサービスとしての「電子新聞」について、私はこのように考えています。

 サービスが安定していること、セキュリティが確保されていること、地方新聞社が導入しやすいことだと思います。「新聞ソリューション」というと大手ベンダーさんが提供する高機能&高価格なサービスがいくつもあります。また資金力のある大手新聞社さんは自社で開発されているところもたくさんあると思います。

 しかし、地方新聞社さんのビジネス規模を考えると、同様に高額な開発費を捻出したり、毎月高額な利用料を負担することは難しく、高機能プロダクトの多くの機能は地方新聞社さんでは使う機会のないものだったりします。システム運用の面からみても、地方新聞社は専任のシステム担当者がいない場合が多く、基本的にベンダー側がサーバやセキュリティといった部分をきちんと担保する必要があります。そういう観点から、地方新聞向けの電子新聞には以下のようなことが求められていると思います。

標準化されたサービス

 地方新聞にとって「紙面の独自性」は必要。しかし、運用の独自性は必要ない。高機能よりも必要十分な機能が簡単に使えることが大事である。

信頼性の担保

 新聞社にとって「紙と同じようにいつでも閲覧できる」ということが何よりも重要。「新聞が見たい時に閲覧できない」という1回の経験だけで購読解約を考えてしまう方もいらっしゃるでしょう。それには、24時間365日、確実に新聞を閲覧できることが必要になってくるので、一般的なウェブシステムより信頼性が重要となります。定期保守などもきちんと考える必要があるわけです。もちろん、新聞の休刊日だったとしても、ウェブを閲覧するユーザーはいます。

専門知識不要で利用できるサービスであること

 情報システム部門があるような大手新聞社とは異なり、地方新聞社さんの場合、電子新聞の担当が「記者と兼務」「編集と兼務」「総務の空いた時間で」といった兼任の場合が多々あります。当然、業務の他にIT系の知識を習得している余裕はありませんし、セキュリティにも疎い方がほとんどです。サービスを提供するに当たって、顧客にこれらの知識を求めることはほぼ不可能と理解し、ベンダーがきちんとしたフォロー体制と運用体制を提供することが重要です。

 これらを実現して初めて、地方新聞社が「安心して使えるソリューション」になると思います。

 今後は、利用企業が増えることで、1社では難しかった、電子新聞システムの標準化やさまざまなノウハウの共有によるコスト削減、新しい機能追加などを手掛けることができるようになると考えます。

 プロジェクト開始当初のビジョンに、

  • 複数の地方新聞社にサービスを提供していくことでより安定した地方新聞プラットフォームを作る
  • 地方新聞プラットフォームに属する新聞社さん同士のコミュニケーションにより、地方新聞ビジネスの活性化を図っていく
  • 地方新聞プラットフォームによって新聞社さんが新たなビジネスにチャレンジできる(例えば地方新聞同士が連係したECサイトを立ち上げ地方の物産を相互に販売しあうなど)

 といったものがありました。既に口コミで3社目以降のオファーも来ており、近い将来、われわれの描いたビジョンを実現していき、地方新聞が末永く地域に愛されるメディアとなると期待しています。実現のためにプロジェクトをサポートしていきたいと思います。

 

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