経済産業省が2016年6月に発表したIT人材の将来推計によると、発表時点で約17万人のIT人材が不足し、人材供給がピークを迎える2019年以降はより顕著になるとされている。こうした状況に企業のIT部門が中途採用や配置転換を積極的に進めている状況が、日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の最新調査結果(速報値)で分かった。
まずIT部門と事業部門、情報システム子会社における要員数の変化では、ここ5年間は増加傾向にあるが、2017度は人材を「増やす」割合から「減らす」割合を差し引いたDI値が9.4ポイントで最大だった。特に情報システム子会社は22.3ポイントと高く、IT部門も前年度で約3ポイント高かった。一方、事業部門におけるIT人材動向に大きな変化は見られない。

IT要員数のここ数年(2~3年)の増減傾向、出典:JUAS
要因の確保については、全業種平均で新卒採用のDI値が8.0ポイントなのに対し、中途採用のDI値は19.8ポイントと、各業界とも中途採用に軸足を置いていることが分かった。中でも金融は、中途採用のDI値が43.8ポイントで最も高い。JUASは、金融ではFinTechなどによるビジネスモデルの変革が経営課題となっていることから、経験のあるIT人材の中途採用で競争力強化を図ろうする様子がうかがえると指摘する。

業種別、IT部門の新規・中途採用におけるここ数年(2~3年)の増減傾向、出典:JUAS
ただし、中途採用者の年齢層は30代が最も多く、企業側が一定の業務経験を持ち、長期的に働ける可能性の高い20~30代の採用に焦点を当てている状況が浮き彫りになった。40代の中途採用は30代の半分以下にとどまっている。

中途採用者に多い年齢層、出典:JUAS
中途採用者に求める要素は、経験および実績が63.2%で最も高く、人柄や業務知識、調整能力などはあまり求められていない。また、求める業務経験ではシステム運用や開発、企画が上位を占め、企業が比較的現場寄りの即戦力を求める傾向にあることが分かった。
一方で「業務改革推進」や「IT戦略」などは低く、企業はこうしたポジションを社内の業務知識に明るい既存の人材から登用し、欠員分を中途採用で補充している様子がうかがえる。

中途採用に求められる人材タイプ、出典:JUAS