開発責任者が挙げたAWSを採用した3つの理由
では、サイボウズはなぜAWSを採用したのか。この点については、佐藤氏が会見で次のように説明した。
「複数の汎用IaaSを検討したうえで、AWSに決めた理由は3つ挙げられる。1つ目は、生産性の高いマネージドサービスが充実していること。2つ目は、ドキュメントやブログなどのコンテンツが充実しており、ユーザー事例も大量に存在し、かつトラブル対応も強力であるなど、エコシステムが大きく広がっていること。3つ目は、セキュリティ関連機能の充実や各種セキュリティ認証への対応実績など、エンタープライズへの対応力に優れていることだ」

2月26日に開いた2018年度の事業戦略説明会でkintone.comの運用基盤としてAWS採用を発表
会見での説明はここまでだったが、その後、青野氏と佐藤氏にもう少し話を聞くことができたので、以下にQ&A形式(敬称略)で記しておく。
――複数の汎用IaaSを比較してコストの評価もAWSが一番だったのか。
佐藤:いや、コストだけを見ればAWSより安いサービスもあった。ただ、会見で述べた3点を中心に総合力を評価してAWSを採用することにした。
――本格的な運用開始にこれから1年ほどかけるのはなぜか。
佐藤:新しいサービスを開始するだけなら半年ほどで準備できるかもしれないが、kintone.comは既に多くのお客さまに利用されているので、慎重に移行しなければならない。その他、これを機にkintone.com自体の機能強化も図っていく計画なので、その検証なども含めて1年ほどをいただきたい。
――AWSの採用には既存顧客の意向もあるのか。
青野:汎用IaaSによって米国内のデータセンターからサービスを受けられるようにしてほしいとのニーズはある。また、分野ごとに求められるサービス内容の違いが出てくる可能性もあるが、AWSならば柔軟に対応できると判断した。
――AWSの採用はkintone.comのグローバル展開への布石か。
青野:そういう思いは強くある。そのためにも、まずは米国でのビジネスをスタートアップのような意気込みと勢いで進めていきたい。
筆者が独自に入手した情報では、kintone.comの既存顧客には超大手のグローバル企業も名を連ねているようだ。kintone.comはそうした巨大組織の中で着実に拡大しつつあると聞く。青野氏いわく、サービスの拡大に伴って事業体制もしっかりと強化していく構えだ。まずは米国での「スタートアップのような意気込みと勢い」に注目しておきたい。