本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、日本マイクロソフトの平野拓也 代表取締役社長と、日本ユニシスの羽田昭裕 総合技術研究所長の発言を紹介する。
「デジタルトランスフォーメーションの実現には4つの戦略が必要だ」
(日本マイクロソフト 平野拓也 代表取締役社長)
日本マイクロソフトの平野拓也 代表取締役社長
日本マイクロソフトが先頃、日本におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の最新状況について、顧客事例や実態調査などを交えた記者説明会を開いた。平野氏の冒頭の発言はその会見で、DXの推進を経営方針の最重要テーマに掲げて事業展開している同社としての見解を示したものである。
会見全体の内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは平野氏の冒頭の発言に注目したい。同氏が挙げた「4つの戦略」とは次の通りである。
1つ目は「デジタル文化の育成」である。「企業はビジネス機能の境界を越えてつながり、顧客とパートナーによる活気のある成熟したエコシステムを構築するために、相互にコラボレーションする必要がある。組織を横断してデータを活用することで意思決定が改善し、最終的に顧客とパートナーのニーズにより適切に対応可能になる」という。
2つ目は「情報エコシステムの構築」である。「デジタルの世界では、企業は社内外で多くのデータを獲得する。DXのリーディングカンパニーになるためには、データを資産へと変換し、オープンかつ信頼できるやり方によって社内外でシェアしていく必要がある。さらに、適切なデータ戦略があれば、企業はデータのつながり、洞察、傾向を発見するためにAI(人工知能)を活用することができる」としている。
3つ目は「マイクロ革新(マイクロレボリューション)の推進」である。「多くの場合、DXは大規模な変革ではなく、小規模な革新が繰り返されることによって進行する。これらの革新は小規模な短期プロジェクトだが、ビジネス上のメリットを生み出し、より大規模で野心的なDXの取り組みへと積み上げていくことができる」という。
4つ目は「AIの活用など将来に備えたスキル育成」である。「今日の企業は、デジタル経済に向けた複雑な問題解決、批判的思考といった将来に備えたリスクをワークフォースが備えるよう、研修制度を再考する必要がある」としている。
なお、同社ではこうしたDXを推進する顧客企業に対し、「ビジョンの策定」「課題解決」「コミュニティ」という3つの観点で図1のような支援策を展開している。
図1:日本マイクロソフトによる「デジタルトランスフォーメーションの実現」への支援策
それにしても、このところDXに代表されるように新しい分野の啓蒙に注力するITベンダーの会見が増えている印象が強い。それだけ時代が大きく変化しつつあるということだろう。中にはPRの仕方として疑問に感じるケースもあるが、ビジネスやマネジメントのニーズとITを結びつける努力の表れと考えれば、価値のある動きなのだろう。今後もITベンダーの「啓蒙活動」に注目しておきたい。