レノボ・エンタープライズ・ソリューションズは3月6日、高性能コンピューティング(HPC)/人工知能(AI)向けソリューションに関する記者会見を開催した。高密度水冷サーバ「Lenovo ThinkSystem SD650」、スケーラブルストレージ「IBM Spectrum Scale向けLenovo分散型ストレージ・ソリューション2.0」、オーケストレーションソフトウェア「Lenovo Intelligent Computing Oechestration(LiCO)」など、HPC/AI向けプラットフォームの拡充を発表した。
ThinkSystem SD650は水冷方式の高密度サーバだ。データセンター向けの水冷技術「Direct Water Cooling」を採用し、最高50度での温水冷却と最大90%の熱除去効率を実現している。Intel Xeon Scalable Processor Familyのターボモードでの連続稼働にも対応する。これによって、空冷サーバと比べて最大10%の性能を得られるという。6Uサイズのエンクロージャに最大12台のコンピュートノードを収容可能。
ThinkSystem SD650の特徴
また、データセンター全体の冷却に関わるエネルギーコストを最大40%削減する。例えば、サーバ290台の運用時で比べると、水冷は空冷よりも5年で7750万円の電気代を節約できるという。冷却水循環装置(CDU:Cooling Distribution Unit)などの冷却設備については、国内市場では東亜電気工業との協業により提供する。ThinkSystem SD650の税別価格は3576万円から。
GPU「NVIDIA Tesla V100」を搭載する空冷高密度サーバ「ThinkSystem SD530」と、用途に応じて6種類のGPUから選んで搭載できる空冷ラックサーバ「ThinkSystem SR650 GPU Readyモデル」も新たに発表した。SD530は、2Uサイズに2ノードを収容し、それぞれに2基のGPUを搭載可能。AIワークロードの推論処理においてCPUのみを使用したサーバよりも約30倍の高い性能を実現するという。SR650には1サーバで2基のTesla V100を搭載可能となっている。税別価格は、ThinkSystem SD530が701万4000円から、ThinkSystem SR650が224万8000円から。
IBM Spectrum Scale向けLenovo分散型ストレージ・ソリューション2.0は、HPC/AI向けのハードウェアとソフトウェアを組み合わせたスケーラブルストレージ。ストレージコントローラには「IBM Spectrum Scale」ソフトウェアを採用し、ThinkSystem SR650上で動作する。OSにはRed Hat Enterprise Linuxを導入している。
最大で1構成当たり504台のHDDを収納可能で、最大5ペタバイトの大容量ストレージを構築できる。ネットワークは、10G/25G/100G Ethernet、FDR/EDR Infiniband、Intel Omni-Pathを選択できる。3月中の正式発表を予定している。
レノボでは、HPC/AI向けのオーケストレーションソフトウェア「Lenovo Intelligent Computing Oechestration(LiCO)」の開発を進めている。ジョブ管理、課金、クラスタ管理、リソース監視・モニタ・通知、ライブラリなどのソフトウェア配布といったオーケストレーション機能を搭載する。
例えば、CaffeやTensorFlowなどAIワークロードごとに必要なフレームワークが異なるため、全体を把握しながらライブラリを含めたバージョン管理をしていくことは非常に困難だ。そこで主要なAIフレームワークをコンテナとして格納し、ジョブごとに生成・回収することで容易に分散学習環境を提供する。LiCOについては4月中の正式発表を予定している。
AIシステム運用の課題と解決策
また、AIの普及を推進していく施策の一つとして、レノボでは、米国・ドイツ・中国の3カ所にAIイノベーションセンターを設置。AIのワークロードで必要となるハードウェアがそろっており、専任のデータサイエンティストも在籍する。顧客が所持するデータをAIで活用すると、どのような価値を生み出せるのかを検討し、実現可能性を検証するための実証実験(PoC)を実施できる体制を整えている。
レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ 執行役員 パートナービジネス管掌 製品・パートナー営業統括本部長の橘一徳氏は記者会見で、同社AI事業のビジョンとして“AUGMENTTED INTELLIGENCE”を掲げ、AI技術を使って人間の知能・知性を拡張し、労働力不足の解消や労働の高付加価値化を支えるものだとアピールした。
具体的には、顧客のアイデアを一緒にAIイノベーションセンター具現化する「Discover」、AIに最適化されたハード・ソフトのポートフォリオを提供する「Develop」、迅速な導入とスムーズなサービス開始・運用のためのソリューションサービスを提供する「Deploy」を通じて、顧客のニーズに応じたAIソリューションを拡充していくとした。
レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ 執行役員 パートナービジネス管掌 製品・パートナー営業統括本部長 橘一徳氏