邦銀61行がブロックチェーン利用の送金を商用化、活用は第3段階を視野に

國谷武史 (編集部)

2018-03-07 16:50

 邦銀61行などが参加する「内外為替一元化コンソーシアム」は3月7日、ブロックチェーン(分散台帳)技術を利用した送金サービスの商用化を発表した

 同コンソーシアムは、ブロックチェーンなどを活用した国内外為替の一元化や決済のリアルタイム化、新たな金融サービスの実現を目的に、2016年10月に発足した。新サービスは、ブロックチェーン技術の1つで米Rippleが推進する「InterLeger Protocol」をベースにした「xCurrent」を採用。同コンソーシアムがインターネットイニシアティブ(IIJ)のクラウド環境上に構築した「RCクラウド 2.0」を基盤としている。参加行は、RCクラウド 2.0に接続する共通ゲートウェイとオープンAPIを介して自行システムと接続する。


「RCクラウド」のイメージ

PoCから商用化に向けた際の取り組み

 サービスでは、スマートフォンアプリ「Money Tap」を利用して個人が自身の銀行口座から別の口座に送金できるというもの。夏頃から住信SBIネット銀行とスルガ銀行、りそな銀行の各行間での送金が可能になる予定で、同コンソーシアムの参加行も順次対応を開始すると見られている。


SBI Ripple Asia代表取締役の沖田貴史氏

 同コンソーシアムの事務局を務めるSBI Ripple Asia代表取締役の沖田貴史氏によれば、RCクラウドは2017年2月に概念実証(PoC)が完了し、同年12月までにシステムの冗長化や金融機関と接続する回線の増強、データバックアップの拡充、セキュリティ対策の強化を図ったほか、共通ゲートウェイやMoney Tapアプリの開発によって商用化に道筋を付けた。複数の金融機関がxCurrentを利用して送金サービスを商用化するケースは、世界では初めてという。今後は海外送金や企業・個人間の送金への対応を図るほか、この仕組みを利用した新たな金融サービスの開発を検討していくことにしている。

 近年の金融分野では、「FinTech」と呼ばれるブロックチェーンなどを活用した新たな金融サービスの開発や提供が進む。銀行単独もしくは複数行でFinTechベンチャーと呼ばれる新興企業とのコラボレーションによる取り組み、あるいはFinTechベンチャーと協業する異業種が独自に金融サービスへ参入するケースも多い。銀行側では、こうした動きをビジネスチャンスと同時に脅威としてとらえる向きもあり、同コンソーシアムの取り組みは銀行側が主導するFinTechの1つの形と見ることもできる。

 沖田氏は、SWIFT(国際銀行間通信)など従来型の銀行間の送金システムでは高度な信頼性が提供される反面、利用に制約を伴ったり、システムの維持にコストを要したりする点が課題だと指摘し、その解決にブロックチェーン技術の活用が期待されると説明する。

 RCクラウドは、現段階では個人間送金を念頭にした新システムと位置付けられているが、共通ゲートウェイやAPIなどは、メインフレームなどによる勘定系システムとの接続開発を容易にするために準備されたといい、参加行はこれらを利用した今後のシステムのあり方を検討し始めているという。


「Money Tap」サービスはまず3行でスタートし、順次拡大する

 また、2018年12月には全国銀行業界(全銀協)の新システム「全銀EDIシステム」が本番稼働を開始する予定で、流通EDIなどの異業種との電子データ交換の広がりも期待される。RCクラウドのような新たな仕組みを含め、金融関連サービスが大きな転換点を迎えつつあるとの指摘も聞かれる。

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