アビームコンサルティングは3月12日、「RPA(Robotic Process Automation)」に取り組む企業の動向を調べた最新の調査結果を発表した。RPAへの取り組みが遅れるほどに、「デジタル企業とアナログ企業の差が顕著になる」と指摘している。
アビームとRPAテクノロジーズによる導入実績と今後の見通し
調査は、同社が日本RPA協会やRPAテクノロジーズと共同で実施しているもの。今回は2017年10~12月の状況を対象にしており、結果発表は2017年12月に続いて3回目となる。
この間に、新たに同社とRPAテクノロジーズが手掛けたRPAロボットの導入企業は97社に上り、2017年通期ではのべ458社に達した。月間の平均導入件数は、2017年上半期が約35件だったものの、下半期は同40社にペースアップし、同社では2018年末までに1000件を超えると予想する。
導入傾向は、業種別では2017年7~9月期に42%を占めた製造が、同10~12月期は60%に拡大し、内訳では電子機器・精密機械(38%)と素材(21%)が半数以上を占めた。規模別では、従業員1000人以上の企業が60%から59%に微減し、同1000人の企業では1%微増した。
アビームコンサルティング 戦略ビジネスユニット 執行役員プリンシパルの安部慶喜氏
記者会見した戦略ビジネスユニット 執行役員プリンシパルの安部慶喜氏は、最新の調査結果でRPAを導入する業種が従来の金融主体から製造やサービスに広がり、規模別でも大企業の本格導入と中堅・中小企業における概念実証(PoC)の取り組みの増加がみられると報告した。
最新調査でのRPAの適用状況は、営業/マーケティングのフロント業務が52%、経理や総務、人事などのバックオフィス業務が48%だった。導入企業の88%は、対象業務の8割以上を自動化し、完全自動化を成功した企業は47%に上るという。一方、RPAロボットの開発期間が4週間以内という企業の割合は約3割低下し、安部氏は「PoCから本番に移行するケースが増え、ロボットにより複雑な業務を処理させるために開発工数が増えている」と説明している。
また安部氏は、2017年のRPA動向を総括して、初期導入の段階に入る企業が増える一方、先進企業が認識技術を組み合わせていく第2段階に突入していると指摘した。RPAでは、例えば、動画像データの認識技術と組み合わせた遠隔監視、音声データの認識技術と組み合わせたチャットボットなどの発展型が実用化されつつあるが、安部氏は特に日本企業では紙文書を電子化するOCR技術との組み合わせがポイントになると解説する。
RPA利用の第2段階では「認識技術」との組み合わせがポイントになるという
アビームがRPA導入を支援した企業の中には、OCRの組み合わせで作業工数を7~8割程度削減しているケースがあるといい、あるサービス企業では支払い請求書のOCRによる読み取りと自動処理、伝票記入をRPA化したところ、作業量が年間260時間から同68時間に短縮され、74%の業務削減効果を得たという。
安部氏は、RPA導入を業務のデジタル化と表現し、企業が想定している以上に業務の定型化とRPAによる自動化が可能だと話す。定型化せず手作業で処理する業務は、アナログ的とも言え、将来的にRPAを活用する企業のデジタル化がますます加速するのに対して、アナログ的な企業ではデジタル化が進まず、その差は顕著に開いていくだろうと述べた。
OCRとRPAを組み合わせたユースケース