IDC Japanは3月14日、国内のモノのインターネット(IoT)市場におけるユースケース別/産業分野別の実績と予測を発表した。これによると、2017年のユーザー支出額の実績は6兆2286億円で、2018~2022年の年平均成長率は14.9%。2022年には12兆4634億円の市場規模に達すると予測している。
IoT市場を産業分野別に分類すると、2017年時点で支出額が多いトップ5は「組立製造」「プロセス製造」「官公庁」「公共/公益」「クロスインダストリー」だった。IDC Japanによると、こうした産業分野では以前からさまざまな組み込み機器や社会インフラの運用効率の向上、機器/インフラを通じたエンドユーザーの満足度の向上を実現する上でIoTを活用している。
2021~2022年には、IoTによって宅内の家電や暖房換気空調(HVAC)の利用を最適化する「スマートホーム」関連のユースケースがけん引し、個人消費者のIoT支出額が急増すると予測する。その理由として、従来は個人向けにインターネットサービスを提供していたAmazon、Google、Appleといった外資系大手ベンダーが、コグニティブ/AIシステムなどのデータアナリティクス技術をIoTと組み合わせることで新規サービスの創出に注力していることを指摘する。
その他のユースケースとして「農業フィールド監視」「小売店舗リコメンデーション」「院内クリニカルケア」「遠隔健康監視」「スマートメーター/スマートグリッド」「テレマティクス保険」「空港設備管理(乗客動線)」「公共インフラ管理」「公共安全システム」を挙げている。これらは、予測期間内に20%を超える年平均成長率が期待できるという。
IDC Japanによると、国内では労働人口不足に対する懸念の広がりや2020年の東京オリンピック開催に向けた景況感が上向きなことに起因し、IoTに対する注目度が一層高まっている。またIoTに必要となるコネクティビティやコグニティブ/AIシステムの多様化と高度化、エッジコンピューティングの浸透といった技術面の進化もIoT市場の成長につながっている。
「IoT Gravity」をキーワードに、「各産業で個別に活動するIoTユーザー/ベンダー」「産業間で分断されているデータ」「知見」「ノウハウ」が融合することが、IoT市場の拡大に大きく寄与していくとIDC Japanは指摘する。
国内IoT市場 支出額予測、2017年~2022年(出典:IDC Japan)
2017年は実績値、2018年~2022年は予測値
折れ線は各年における前年比の成長率