IBMは米国時間3月19日、ネバダ州ラスベガスで開催中の「Think 2018」カンファレンスで「世界最小」のコンピュータを発表した。塩粒ほどの大きさのこのコンピュータは、1年間で6000億ドル(約64兆円)に達するとされている、医薬品やテクノロジ製品、現金の偽造品流通防止に役立つはずだ。
同社は、世界のサプライチェーンにおける偽造品の流通を監視するという目的で、この超小型コンピュータがブロックチェーンネットワークにおいて重要な役割を担うことになると予測している。
この微細コンピュータは、サイズが1平方mmであり、不正防止システムにおける、いわゆる「クリプトアンカー(crypto-anchors)」として機能することになる。
IBMによると、その製造コストはたったの10セント(約11円)であり、「数十万個のトランジスタと、ストレージ、電源、通信機能が塩粒ほどの大きさに詰め込まれている」という。
IBMはその仕様をまだ公開していないが、同社の広報担当者が米ZDNetに語ったところによると、1個で1990年代のx86チップなみの性能を有しているという。
ニューヨーク州ヨークタウンハイツにある同社のThomas J Watson Research Center(トーマス・J・ワトソン研究所)は近々、このコンピュータの詳細を論文で発表する予定だ。ただ、大まかな設計はIBMによって説明されている。
IBMが公開した写真には64個のマザーボードが写っている。左端のマザーボード2つの上にはそれぞれ、世界最小のコンピュータ(盛り上がった立方体部分)が取り付けられている。

提供:IBM
IBMは、こういったコンピュータのコストとサイズを激減させることで、商品がサプライチェーンからコンシューマーの手に届けられるまでの真正性を保証する目的で、同コンピュータを製品に組み込めるようになると期待している。
同社が開発した、太陽電池で駆動するこの超小型コンピュータは、製品に埋め込まれ、LEDの発光によってネットワークと通信することになる。企業は、IBMのこのコンピュータを埋め込むことで、製品や部品それぞれの真正性を保証、証明できるようになる。
IBMによると、顧客は向こう18カ月以内にこういった超小型コンピュータの第1号製品を利用できるようになるという。同社は、食の安全や製薬、製造、遺伝子操作食物、高価なワイン、高級品といった市場で需要があると見込んでいる。
このような応用では、製品のラベル上に配置し、デジタルフィンガープリントとして使用できる光学的な仕組みに基づいた既存のクリプトアンカーシステム上に構築されるものとなる。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。