「デジタルビジネスは、俊敏性、多様性、接続性、スケーラビリティを要求している。マイクロサービスなら、これらの要求に応えられる。新しい機能やアプリケーションを、他に影響を与えずに迅速にデリバリできる、デジタルビジネスの実現にはマイクロサービスのアーキテクチャが適している」

ガートナーのリサーチ部門でリサーチディレクターを務める飯島公彦氏
3月16日、「ガートナー エンタプライズ・アプリケーション戦略&アプリケーション・アーキテクチャ サミット2018」のセッションの1つとして、ガートナーのリサーチ部門でリサーチディレクターを務める飯島公彦氏が登壇。「デジタル・ビジネスを支えるアプリケーションの必須要件:マイクロサービス適用の留意点」と題して講演した。
飯島氏によれば、昨今、マイクロサービスに関する企業からの問い合わせが増えている。明示的にマイクロサービスを指定していなくても、「ビジネスのスピードに付いて行くために、ITはどういうアーキテクチャにすればいいのか」といった、マイクロサービスに関するものが多いという。
ガートナーの調査によると、グローバル企業の50%が2018年までにアプリケーションプラットフォーム戦略が重要なビジネス戦略となるとしている。企業がデジタルエコシステムのプラットフォームの構築に注力する中で、マイクロサービスは重要な位置を占めると飯島氏は言う。
講演の冒頭では、デジタルビジネスにおいてなぜマイクロサービスが必要なのかについて掘り下げた。続いて、実際にマイクロサービスをアプリケーション構築に適用する上での課題を、適用領域の決定から設計時、開発時まで、10項目挙げて説明した。
デジタルビジネスの要求をマイクロサービスで満たす
「マイクロサービスは、SOA(サービス指向アーキテクチャ)の進化系だ。導入するにあたって、マイクロサービスアーキテクチャを採用する目的がクリアになっていなければならない」(飯島氏)。
マイクロサービスアーキテクチャとは、大きいモノリシックなアプリケーションを、独立した小さな塊に分割する考え方のこと。このアプローチによって実現できる効果は、開発の俊敏性、デプロイの柔軟性、精緻な拡張性だ。
マイクロサービスアーキテクチャを実現するサービスがマイクロサービスだ。マイクロサービスは疎結合で、アプリケーションや機能の実行に必要な要素を、データを含めて内部に閉じ込めてカプセル化できる。単独でデプロイ可能で、負荷に応じて拡張できる。REST APIなどの標準的なインタフェースで利用できる。
マイクロサービスなら、他のモジュールの影響を受けず、与えず、新機能や変更をデリバリできる。APIを介して機能にアクセスできる。デプロイの独立性によって、分散配置や複数バージョンの共存ができる。
一方、デジタルビジネスのプラットフォームには、4つのビジネスモデルがある。コラボレーション型(利便性と効率性を高める)、オーケストレーション型(ビジネス機能を組み合わせる)、クリエーション型(ビジネス創生の場を提供する)、マッチング型(需要者と供給者をマッチングさせる)だ。
4つのビジネスモデルに共通する要素は、変化に対する俊敏性だ。個々の要求に対して個別に素早く対応していく必要がある。こうした要求に対して、マイクロサービスが有効となる。「デジタルプラットフォームがアプリケーションに求める要素と、マイクロサービスの特徴が合致している」(飯島氏)