ゲーム用PCなどグラフィックの処理用途とみられていたGPUを人工知能(AI)に用いることで、人工知能(AI)時代をけん引しているNvidia。同社を共同設立し、社長兼最高経営責任者(CEO)を務めるJensen Huang氏は、「全ての企業が社内にスパコンを持つ時代になる」と予言する。高性能コンピュータで提携したIBMのカンファレンス「Think 2018」で話した。
NvidiaのJensen Huang氏(左)とIBMのJohn Kelly氏(右)
NvidiaはAIで必要になる処理能力を供給できる高性能コンピューティング(HPC)向けとしてGPU(グラフィックプロセッシングユニット)を売り込むことで、AI時代の代表的企業になりつつある。なぜAIに賭けたのか?ーーIBMでコグニティブ・ソリューションおよびリサーチ担当シニア・バイス・プレジデントであるJohn Kelly氏の問いに対し、Huang氏は約7年前に深層学習についての説明を受け、感動したからだと答える。
「アルゴリズムが重要な特徴を検出できる。将来、ソフトウェアを使ってソフトウェアを書くことができるーーコンピュータが学習するマシンになる」とHuang氏。Nvidiaはこれまで約100億ドルを深層学習、AIに投資してきたという。
IBMの「Power 9」をポケットから取り出すNvidiaのHuang氏
Huang氏は最新の成果として、「NVIDIA RTX」の発表を報告した。リアルタイムレンダリングのレイトレーシング技術であり、「コンピューターグラフィックの聖杯」と表現する。
自律的マシンの分野での取り組みでは、応用として自動運転車を説明した。自動運転といえばスピーチの前日にUberの自動運転車が死亡事故を引き起こしたことが明らかになったところだ。Huang氏は自動運転車に取り組む理由として、1)深層学習・AIがなければ不可能であるユースケースであること、2)人の生活が関係すること、3)新しい種類のソフトウェア開発であることを理解すること――の3つを挙げながら「安全性は重要性だ。とても複雑なことが要求される」と続けた。
Nvidiaは自社AIプラットフォーム「NVIDIA DRIVE」を通じて自動運転の研究を進めている。Huang氏のスピーチでは、動画で実験の様子を紹介した。カメラ、レーダー、ライダー(Lidar、レーザー画像検出と測距)を使い、数十のアルゴリズムが同時に動いているという。「1日に0.5PBのデータを収集するものもある」という。
「われわれは700のシステム、700ペタフロップを用意している。これは最大級のスパコンの4倍以上だ」とHuang氏、目標は自動運転に必要な「冗長性と多様性に到達すること」。特定のシステムに依存することなく自動運転が行われるのに必要という。
Nvidiaは自動運転向けAIの取り組みとして、認識、ローカライゼーション、プランニングの3つの機能にフォーカスしているという。
自動運転ソフトウェアでは、データの収集、そしてデータのキュレーション、クリーニング、オーグメンテーションの戦略、続いてモデルのトレーニング、シミュレーション、そして実際の運転と4つの要素があるが、ここで高性能なコンピュータは不可欠だ。Nvidiaは以前から提携関係にあったIBMと手を組み、企業向けのGPUサーバの開発を進めている。
これは自動運転に限った話ではない。「さまざまなセンサがあり、データがある。これはビジネスでも同じことだ。エンジニアがコードを作成するのを待つのではなく、コンピュータが学習する。速く学ぶことで速く市場に出られるーーソフトウェアの開発が変わっている。あらゆる企業がHPCやスパコンを持つ時代になった」とHuang氏は述べた。