トレンドマイクロ 代表取締役社長兼CEOのEva Chen氏
トレンドマイクロは3月28日、2018年の事業戦略を発表した。セキュリティ監視センター(SOC)関連の製品やサービスを新たな主力事業に位置付け、法人とIoT、コンシューマーの3つの市場で展開する方針を明らかにした。
記者会見した代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO)のEva Chen氏は、2018年が同社の創業30周年に当たり、「特別な1年」と説明した。同社は、PC向けのアンチウイルスを皮切りに、セキュリティの脅威からユーザーを保護する環境をLANやクラウドに拡大。今後はモノのインターネット(IoT)が焦点になることからChen氏は、ネットワークにつながる世界がさらに広がり、その世界を守ることを象徴する言葉として「SOC」を採用したと話す。
SOCは、ファイアウォールやIDS/IPS(不正侵入検知/防御システム)などのセキュリティ機器の運用と、機器が検知した事象を専門家が解析調査する機能を持つ。昨今では大企業を中心に自前でSOCを運用するケースが増えているが、多くの企業はマネージドセキュリティサービスプロバイダー(MSSP)と呼ばれる専門会社に、自社が保有する機器の運用を委託している。
法人向けSOC事業戦略における基本方針
トレンドマイクロの事業戦略では、同社が自らSOCの運営やサービスに乗り出すのではなく、既存のSOCのユーザー企業やMSSP向けには、運用効率化や脅威情報を用いた防御能力の強化を図る製品の改善や新機能の開発、ツール/サービスの提供を軸に、新たなビジネスモデルの拡大に乗り出す。IoT向けでは、主に工業の制御システムやネットワークに対応するIoT用SOCの構築を支援し、将来的にはIT系のSOCを統合した次世代型SOCの実現につなげる。
取締役副社長の大三川彰彦氏
日本の事業を担当する取締役副社長の大三川彰彦氏は、具体的に企業別課題別のSOC支援と、同社が2015年に米HPEから買収したTippingPointのIPSの国内展開という2つの施策を推進すると説明した。
特にIoT向けSOCでは、2017年10月に発表したIoTセキュリティ戦略を中核として、セキュアなデバイス開発を支援するSDKや管理ツールの提供と、「Trend Micro Security VNF」と呼ぶネットワークのセキュリティ制御ソリューションの提供の拡大を図る。TippingPointについても2017年までのグローバルでの提供体制を再構築し、国内向けにも2018年から展開できるようになったという。
なお、コンシューマー向けにうたうSOCは、法人向けと同様のサービスなどを展開するわけではなく、「ウイルスバスタークラウド」で提供する「デジタルライフサポート プレミアム」サービスの内容をより強化したものを構想している。
法人向けのイメージが強い「SOC」のコンセプトをコンシューマー向けに打ち出す
Chen氏によれば、ウイルスバスタークラウドの新規ユーザーの半数は、デジタルライフサポート プレミアムを契約しているといい、今後はユーザーの同意を得て、スマートスピーカーなど新たに家庭内でネット接続される機器の通信の監視やログ分析などを同社が行い、脅威の防御やホームネットワークのセキュリティ診断、アドバイスなどを提供する考え。同社が「SOC」のような役割を果たしていくと説明した。