2017年は日本でPRサービスを展開するのに素晴らしい年だった。2020年東京五輪開催への関心の高まりと市場への参入が相次いだことで、マクロ的には市場の成長スピードが速くなった。一方、ミクロで見ると、別の意味で著しい変化が進んだ。この傾向は、特に経済が「Disruptive Innovation(破壊的イノベーション)」を経験している中で、積極的な雰囲気のある国々において顕著だ。
筆者も日本で、PR会社との契約を打ち切って全リソースをソーシャルメディアマーケティングに投入する企業や、デジタルマーケティングキャンペーンの予算配分を増やす企業を目の当たりにするなど、その傾向を痛感した。実際、米国では大統領がTwitterを使うことで、良い意味でも悪い意味でも「従来のメディアシステム」を回避している。
私は最適な手段を組み合わせて相乗効果を狙う「コミュニケーション・ミックス」の支持者であるが、日本に関して言えば、2018年の主導権は引き続きマスメディアが握っていると考えている。テレビ出演の効果を問えば、今もなおテレビが「Broadcast」(広く拡散する)と呼ばれている理由が分かる。メディアリレーションは、戦略的コミュニケーションの柱として、2018年も企業や個人の成功を支える主要要因となり得る。
私がマスメディアの持つ力を初めて知ったのは、日本が「日本株式会社(ジャパン・インク)」として知られていた昔、日本経済を支えていた「マスメディア」「企業」「政府」のいわゆる「ゴールデン・トライアングル」についての講義を受けた時だ。2018年に至るまで、マスメディアは再構築・再編成されてきたが、現在も優れた立ち位置を維持している。独自アプローチでかつてないほどブランドポジショニングを成功させている。
既に5月を迎えようとする2018年。マスメディアは引き続き話題をリードし、スマートマネーと深く関わる。そのように私が考える5つの理由を紹介したい。
- 情報やアドバイスを専門家や権力者に求める日本では、マスメディアのブランドとジャーナリストへの信憑性があり、ステークホルダーやターゲット層は信頼を寄せている。ブランドへの認識と意見および因果関係を形成する媒体としては、マスメディアが突出している。多くの人は新参者よりもベテランや長い実績をもつ存在を信頼する傾向があり、したがって、スタートアップや新規参入者が、大金をメディアリレーションに積極的な投入したがる。
- 米国で「Infobesity(情報肥満)」という言葉が一般化するほど、スマートフォン、インターネット、ブログなど、情報の選択肢が以前とは比べものにならないほど増えている。情報過多の世の中では、マスメディアのよく調べられた情報と編集能力が、信頼性のある情報源として、2018年も引き続き、いやこれまで以上に、高く位置付けされるだろう。また、マスメディアが長年培ってきた人脈、リソース、納得感を与える文筆力が、企業のターゲット層にさらなる価値を提供する。
- 人脈について言えば、マスメディアはその職業的性格から、広いコネクションを持ち、強い影響力を持つ発信力を活用できる立場にある。その意味で、イベントの開催は、次のエディトリアルカレンダーコミュニケーションの場を広げられ、新しいアイデアを取り入れて交換し、機会を発見する有効な手段といえる。
- 筆者が運営するPR会社では、最も有意義な仕事は依然として対面型で処理している。多様なコミュニケーションデバイスがこれほどまでに普及しているにも関わらず、マスメディアと、さらには、多くの企業と政府はすべて都心の中心部に密集して活動している。この点において、日本の文化面に地理的立地が大きな補助的役割を果たしている。この地理的立地は、どんなにコミュニケーションデバイスが発達しても、ソーシャルメディアが隆盛を極めても、完全にその優位性を奪うことはできない。
- 最後に忘れてはならないのは、従来のマスメディア(ソーシャルメディアではなく)は、その関連組織団体から正当性を認識してもらえ、受け入れてもらえるので、ブランドの信頼性を別次元へと引き上げられるということだ。この点において生じる課題は、クライアント側にあることが多い。PR、マーケティング、セールス部門が対立しているとは言わないまでも、協調性に欠けることが多いことを記しておく。
まとめると、ブランドに関する納得のいく対話を確立し、利害関係者とターゲットオーディエンスのイメージを強化する媒体として、マスメディアより優れたサードパーティーは、現時点では日本には存在しない。市民ジャーナリストやソーシャルメディアは、厳しい内輪の戦いに直面している最中だ。
次の記事では、「PRを始める際にすべきことは何か」について取り上げる予定だ。