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海外にますます遅れる日本企業--APIは周回遅れ、最高データ責任者の設置を

國谷武史 (編集部)

2018-04-09 07:00

 デロイト トーマツ コンサルティングは4月6日、企業が把握すべきテクノロジトレンドをまとめた年次レポート「Tech Trends 2018」の日本語版を発表した。レポートで取り上げた8つのトピックのうち5つで、日本企業と海外との差が広がりつつあると指摘する。

 同レポートは、2017年12月にDeloitteが発表しており、レポートで取り上げた8つのトピックは下記の通り。発表会では、執行役員 パートナーの安井望氏が日本の状況を中心に解説した。

  1. テクノロジの再構築
  2. ノーカラーワークフォース
  3. エンタープライズデータのあるべき統治
  4. 次世代の基幹システム
  5. デジタル現実
  6. ブロックチェーン
  7. API
  8. 飛躍的進化が期待されるテクノロジ

デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員 パートナーの安井望氏

 レポート全体の概要について安井氏は、2017年版では企業がさまざまなテクノロジを積極的に活用する「躍動」がテーマだったのに対し、2018年版では個別のテクノロジを組み合わせていく「調和」がテーマだと述べた。2017年までは、新しいテクノロジの可能性を実証する段階にあったが、2018年からはそれらの成果を実際のビジネスに適用させていくフェーズになると予想する。

 上記の8つのトピックのうち安井氏が、「日本と海外の差が広がりつつある」としたのは、テクノロジの再構築、ノーカラーワークフォース、エンタープライズデータのあるべき統治、次世代の基幹システム、APIの5つ。中でもAPIは顕著であり、“周回遅れ”と言える状況に陥っているという。

テクノロジの再構築

 テクノロジの再構築とは、ITとビジネスがもはや区別するものではなく、一体的である状況を踏まえ、トップダウンとボトムアップの両面からテクノロジを取り入れたビジネスを作り上げていくべき、という提言になる。安井氏によれば、日本企業は特にIT部門が昔ながらのボトムアップ型中心のスタイルを変えておらず、ビジネスに取り組むスピードが海外企業に比べて遅い。

 海外では、デジタルテクノロジとビジネスを一体的にとらえ、事業部門とIT部門も一体的に取り組むスタイルへ移行しているという。具体的には、テクノロジを活用した新規ビジネスに取り組む場合、日本では「最高デジタル責任者」や専門組織が独自に動くケースが多い一方、海外では既にその方法が組織間の断絶を生じさせ、効果を見いだせないことにつながると認識されている。

 「スマートフォンなどデジタルの新たな顧客接点を構築すれば、必ずバックエンドシステムへの接続を伴う。しかしデジタル部門とIT部門がバラバラでは、フロントエンドが作られただけで終わってしまう」(安井氏)

 安井氏によれば、「テクノロジの再構築」とは、IT部門という組織のあり方そのものの変化も意味する。IT部門が自ら変革することは難しく、これには経営トップが主導する必要があるという。

ノーカラーワークフォース

 ノーカラーワークフォースは、管理職の「ホワイトカラー」や現場職の「ブルーカラー」になぞらえ、業務領域で活用が進む“労働力”としてのロボティックプロセスオートメーション(RPA)や人工知能(AI)を意味する。安井氏によれば、RPAやAIの活用で人間の手作業を自動化するという効果では日本も海外も同じだが、位置付けは大きく異なる。

 海外では、RPAやAIをいわば人間の“同僚”と位置付け、人間が新しい仕事へ取り組むために、既存の業務の代わりをする戦力と考えている。一方で日本は、人間の作業を置き換える業務効率化の手段にとどまり、海外のような人間の新たな活用という部分に意識が及んでいないという。

 安井氏によると、日本ではRPAやAIの活用が人間の仕事を奪うとの懸念が強いものの、Deloitteのグローバル調査では、こうした見方は20%にとどまり、むしろ人間がなすべき仕事は今まで以上に広がるとしている。

 このため海外の先進企業では、従業員とRPAを組み合わせた業務プロセスの設計や人事評価制度の構築に乗り出しているといい、RPAやAIを単なる“仕事マシン”ととらえる認識はもはや時代遅れとも言える。

エンタープライズデータのあるべき統治

 このトピックは、以前は「データを分析せよ」という観点だったが、2018年版のレポートは「データをどう使うのか」という、より根本的な観点で取り上げられた。安井氏によれば、企業が持つ自らのデータだけでは足りず、あらゆる場所に散在するさまざまなデータをどう利用していくかを考え、そのための仕組みを構築しなければならない段階にある。

 ここでは、多種多様なデータのそれぞれに“オーナー”が存在するということがポイントになる。企業がデータを活用するには、オーナーの了解を得る、あるいはそのデータが所在する場所の規制に対応する必要があり、直近では5月に欧州連合(EU)で全面施行される「一般データ保護規則(GDPR)」が挙げられる。

 そのためには、経営レベルでデータの利用や管理に関する責任を負う「最高データ責任者(CDO)」の設置が求められるという。安井氏によれば、同じCDOでも、最高デジタル責任者(Chief Digital Officer)より、最高データ責任者(Chief Data Officer)の設置を優先すべきとのことだ。

次世代の基幹システム

 ここも以前のレポートでは、「基幹システムのクラウド化」という観点で取り上げられていたが、今回は「テクノロジの再構築」のトピックと関連して、デジタルビジネスに対応する新たな基幹システムの必要性を提起している。

 基幹システムのクラウド化は多くの場合、システムが稼働するインフラを再構築することで効率性を改善するものだった。それに対して次世代の基幹システムとは、フロントエンドからのデータを統合基幹業務システム(ERP)などに蓄積すると同時に、リアルタイムな分析などを通じて、新しいビジネスの一手を打つものになる。

 「よく日本企業から『いつSAP ERPをHANAにすべきか?』と相談されるが、もはやそんな状況ではない」と安井氏は話す。単なる既存ERPのリプレースではなく、デジタルビジネスに必要な基幹システムを戦略的に作る必要性を指摘している。

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