日本企業はAPI利用に消極的?
安井氏が、特に日本企業と海外の差が広がっていると指摘したAPIは、その利用において日本が厳しい状況にあるという。経営に大きなインパクトを与えるテクノロジであるだけに、安井氏は「海外の動きを早急にキャッチアップしなければならない」と警鐘を鳴らす。
APIそのものは、異なるシステムを接続するためのインターフェースだが、海外では業種の異なるさまざまな企業同士で新しいビジネスを創出する取り組みが日常化し、その際に、標準化されたAPIを駆使して異なるシステム同士をつなぎ、新しいビジネスのためのIT基盤をスピーディーに開発する。つまり、APIの利用は経営サイドの要請から生じているとも言える。
「システム接続する際に、インターフェースも障害や不具合の温床になりやすいが、標準化されたAPIならトラブルの確率が低く、開発の手間も少ないので、海外では標準化されたAPIを活用して開発スピードが飛躍的に向上している」(安井氏)
また、海外に比べて日本企業のシステムは種類や数が非常に多く、異なるシステムを接続させるだけでも多くのコストを伴うが、そもそも異なるシステムを接続することが、新たなトラブルの温床になったり、データのプライバシーといった観点から消極的だったりするため、APIを積極的に活用しようとする機運が高まらないようだ。
安井氏によれば、標準化されたAPIは既に海外主導で開発されたものが主流であり、標準化されたAPIを売買する場所としての「APIマーケットプレース」が次々に登場している。まだ有力なAPIマーケットプレースは存在しないが、ITベンダーが主導権争いを繰り広げており、直近ではデータ統合プラットフォームのMuleSoftを買収したSalesforceの動きが注目されるという。
今後、日本企業としてはAPIに対する見方を変えるだけでなく、安井氏は、どのAPIを採用するのか、新規のビジネスに必要となるシステムの再構築をどうすべきか戦略的に検討する必要があると指摘する。ただ、上述の複雑なシステム環境や意識からその道のりが長く厳しいものになるとの見方も示している。