NECは4月6日、ウェアラブルセンサを用いて取得した加速度や皮膚温度、皮膚電気活動の生体情報から、従業員の継続的な仕事量と質の過多、険悪な人間関係といった長期ストレスを段階別に高精度に推定する技術を開発したと発表した。これにより、高いストレスリスクの早期発見を可能にする。
同社によれば、従業員の心身の健康を維持、向上させることで企業の生産性を高めることは、企業経営の上で大きなテーマとなっている。労働安全衛生法の改正により、ストレスチェックの実施が義務化されているほか、最近では経営課題の「働き方改革」の一環として、従業員の健康管理に積極的に取り組む企業も増加している。
従業員が抱える心身の不調の主要因の1つとして、長期的なストレスの蓄積が挙げられる。組織や従業員の健康管理上、長期ストレスの程度を雇用者や従業員本人が常日頃から把握し、対処していくことは極めて重要だが、客観的に捉えることは容易ではない。
これまで長期ストレスを把握する方法として最も一般的なアンケートは、数カ月ごとの定期的な状態把握には有用だったが、回答者に負担がかかるなど頻繁な実施は困難だった。また、ウェアラブルセンサから取得する生体情報を用いて、高ストレス者と低ストレス者を2段階で分別する技術では、高ストレスの兆候を検知することはできなかった。
NECは今回、リストバンド型ウェアラブルセンサで取得した生体情報から長期ストレスを精度よく推定するために、「一時的に大きなストレスを受けると、その後に細かなこともストレスと感じてしまう」という心理学の知見を導入。これを反映できるような長期ストレスの微細な差異を表す「生体情報特徴量」を考案した。これにより、生体情報による推定で、アンケート結果に相当する細かで高精度な長期ストレス認識を実現するという。同手法により、長期ストレスを常時推定・把握できるため、高ストレス状態になることを未然に防ぐことができるとしている。
長期ストレスを把握し「高ストレスになることを未然に防ぐ」(出典:NEC)
NECは、同技術を社内で検証。従来技術と比較し、より正確に長期ストレスを推定できたとしている。またアンケートによるストレス値と比較したところ、平均誤差3.3で高精度に長期ストレスを推定できることを確認したという。NECによれば、これは高低2段階しか区別できなかった従来技術に対し、本技術では高ストレスの兆候を含めて6段階まで区別できることに相当する。
生体情報の時間経過による変化を捉えることによる推定精度向上の例(出典:NEC)