アドビ システムズとWPPグループのThe Government and Public Sector Practiceは4月11日、電子政府サービスについて実施したユーザー調査の結果を発表した。結果から、ユーザー中心の電子政府が必要であることを説明した上で、内閣官房など国や大学関係者がそれを実現するための施策を紹介した。
アドビの政策渉外担当シニアマネージャーの西嶋美保子氏によると、オーストラリアでAdobeが調査したところ、1トランザクションにかかるコストは、「対面」での対応が16.9オーストラリアドルに対して、「オンライン」では0.4ドルであることが分かった。また、英国では電子政府にシステム移行したところ、2014年の1年間で17億ポンド(2605億円)のコスト削減効果があったという。
コスト削減の観点からも電子政府の有効性は見えてきているが、ユーザーである国民中心の仕組みになっていないなどの課題があるという。また、デジタル体験という意味でも、現状の行政サービスモデルでは、国民の求めるデジタル体験ニーズに応えられていないことが分かった。
この調査により判明した、電子政府において国民が望むデジタル体験は以下の5つ。
国民のニーズを完結できる設計であるかを示す「シチズンジャーニー」、モバイルデバイスへの対応を図る「モバイル」、サイトの設計やグラフィック、コンテンツなどの「デザイン」、国民によってパーソナライズされる設計であるかを示す「パーソナライゼーション」、国民と行政機関の間で信頼関係が構築されるように設計されているかという意味での「リレーションシップ」だ。
この調査結果を受けて、内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室の内閣参事官を務める奥田直彦氏は、デジタル政府の具体的な実行計画を紹介。マイナンバーの活用などにより添付書類の提出を撤廃するなどによる行政サービスの100%デジタル化や、オープンデータ推進による行政保有データの100%オープン化、デジタル改革の基盤整備などを実行していくとのこと。
その上で奥田氏は、ユーザー中心の行政サービス改革に向けた、サービスデザイン志向を実践するための具体的なポイントとして、サービス設計12カ条を示した。
・利用者のニーズから出発する
・事実を詳細に把握する
・エンドツーエンドで考える
・全ての関係者に気を配る
・サービスはシンプルにする
・デジタル技術を徹底的に活用する
・利用者の日常体験に溶け込む
・自分で作り過ぎない
・オープンにサービスを作る
・何度も繰り返す
・一遍にやらず、一貫してやる
・システムではなくサービスを作る
それぞれの項目の狙いは下記の写真にある。これまでのIT化や業務改革の取り組みから得られたノウハウをベースにしつつ、デジタルサービス改革に関する近年の国際的な動向とも同期を取ったと説明している。
以下では記者説明会の様子を写真で紹介する。