SAPの最高経営責任者(CEO)Bill McDermott氏は、ソリューションスイートは常に勝利するものであり、それはクラウドでも同じだと主張している。同氏は4年あまり前に「クラウドの未来は、企業の統合にある。最後には常にスイートが勝利する。これまでもそうだったし、これからもそうだ」と発言している。
実際はどうなのだろうか。2014年のMcDermott氏の発言は、純粋クラウド主義者からは多少笑いを買ったかもしれないが、今では、どちらかと言えば正しかったと評価できるかもしれない。
RightScaleが発表したレポート「2018 State of the Cloud」では、単一クラウドを全面的に採用する動きに関して、複雑な結果が出ている。企業の58%は、2018年の最優先事項はクラウド経費の最適化だと回答しており、これは、割引を求めてロックイン契約が増える傾向が強まるとみられることを意味している。しかし一方で、単一のパブリッククラウドプロバイダーを避ける戦略を取っている企業の割合は、2017年の20%から、2018年には21%に増加している。あるいは、単純さを求めてプロバイダーを1つに統一すると公言することは、あまり体面の良いこととは(まだ)考えられていないのかもしれない。
筆者は今後、利用するパブリッククラウドプロバイダーを統一する企業が増えるとみている。なぜなら、それがもっとも抵抗が少ない選択だからだ。
これは、多くの企業が1つのクラウド企業にロックインされることを選び、マルチクラウドに向かうべきだというお題目は無視されるということだ。ロックインされるという言い方を嫌って、特定のクラウドプロバイダーが「好ましい」といった表現をする顧客もあるかもしれない。米ZDNetが話を聞いたある最高技術責任者(CTO)は、文化やロードマップについても多少は考慮したが、主に価格でクラウドプロバイダーを選んだと明言していた。1つのプロバイダーと独占的に契約すれば、割引や割安な価格の恩恵を受けられる。そして、各プロバイダーのイノベーションが続く限りは、その戦略も合理的だろう。問題は、プロバイダーやパートナーが手を抜き始めないかどうかだ。
筆者はこれまで、非常に長い間エンタープライズ技術の業界に関わってきており、ロックインが引き起こした惨劇を何度も記事にしてきた。企業があるプロバイダーを全面採用したという発表を聞くたびに、筆者は頭を横に振っている。しかし、今回ばかりは事情が違う可能性もあると考え、何人かのアナリストに意見を聞いてみた。