SAPは、IoT(モノのインターネット)や自動化されたプロセスからのシステムの利用が増えていることを受けて、人間による直接的なアクセスと、システムからの間接的なアクセスを区別して課金する、新たな料金体系を発表した。
現段階では、今回の料金改定が個々の顧客に与える具体的な影響は明らかではない。顧客企業が新料金の影響について理解するには、今後、自社の利用状況や、SAPのERPプラットフォームに対する直接アクセスと間接アクセスの比率などについて分析する必要があるだろう。従来のSAPの料金体系では、デジタルアクセス(Salesforceなどのサードパーティーシステムを介した、検証や計算処理、情報交換などを含む)も人間による直接アクセスと同様に扱われて課金されており、利用量とドキュメントの種類に基づいて課金される新料金体系への移行は、ユーザーにとって有利に働く可能性がある。

それに加えSAPは、ライセンスの営業部門と、ライセンスの監査・コンプライアンスを実施する部門を分離する。これらの機能が分離されたことで、顧客企業が、従来のSAPとの契約を近年のデジタルビジネスのあり方とすり合わせるのは楽になるはずだ。従量課金の料金体系が導入されれば、利用量も明確に見えるようになり、(少なくとも理論的には)SAPのライセンス監査によるトラブルも減ると見られる。
以下では、今回の新料金体系の導入に関する主要な論点とその意味についてまとめてみよう。
SAPの狙いは?SAPが何カ月もかけて料金体系の改定作業を進めてきたのは、同社の最高経営責任者(CEO)Bill McDermott氏が2017年にも説明していた、顧客の信頼を獲得する取り組みの一環だ。同氏は2017年の「Sapphire Now」で、間接アクセスのライセンスに対する顧客の不満について言及している。今回の取り組みは、料金やデジタルビジネスでの利用モデルに関する顧客の不満を解消しようとするものだ。
SAPは、同社のソフトウェアに対する(人間による直接アクセスではない)システムからのアクセスが増加している状況を受けて、料金体系を変更せざるを得なかった。IoT(モノのインターネット)やボット、クラウドシステムなどを介した間接アクセスは、トランザクションやシステムで処理されるドキュメントを元にライセンスされ、課金されることになる。この従量課金のアプローチは、従来の料金体系よりも合理的だ。
影響を受けるソフトウェアは?SAPの新しい料金体系は、「SAP S/4HANA」「SAP S/4HANA Cloud」「SAP ERP」に適用される。