求められる中長期的な視点での人材戦略
一方、優秀な人材を外部から採用しようとしても、従来の人事評価制度や報酬の考え方が障害となる場合もあるでしょう。また、運よく採用できたとしても、企業風土や制度が整わない状況では、そのような人材が十分に活躍できないという事態も起こりえます。採用活動の強化だけでなく、さまざまな人事戦略上の変革を同時に行っていかなければなりません。
外部からの中途採用だけでなく、社内の事業部門や企画部門の中にも、何らかの教育や訓練を施せばイノベーション人材となりうる候補者が埋もれていることも多いので、その選択肢も見逃さないようにしたいところです。
一方、既存のIT部門やグループIT子会社のスタッフがイノベーション人材となるように育成する取り組みも活発化しつつあります。本連載「IT部門人材のイノベーションへの適性」で述べたように、従来のIT人材が保有するスキルや経験がイノベーションの創出や推進に活用できる場面はあります。こうした強みを活かしつつ、新たな方法論や技術を取り入れていく挑戦意欲を掻き立てることがポイントとなるでしょう。IT部門は、今後3~5年で従来型IT人材とイノベーション人材の比率をどの程度にしていくのかの方針を定め、目標を持って人材育成に臨むことが求められます。
- 内山 悟志
- アイ・ティ・アール 代表取締役/プリンシパル・アナリスト
- 大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストとして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。現在は、大手ユーザー企業のIT戦略立案のアドバイスおよびコンサルティングを提供する。最近の分析レポートに「2015年に注目すべき10のIT戦略テーマ― テクノロジの大転換の先を見据えて」「会議改革はなぜ進まないのか― 効率化の追求を超えて会議そのもの意義を再考する」などがある。