富士通とシンガポール科学技術研究庁(A*STAR)、Singapore Management University(SMU)は4月16日、シンガポール海事港湾庁(MPA)と共同で、シンガポール港における船舶の交通マネジメントのための技術を活用し、共同実証を開始したと発表した。MPAから提供される船舶の交通データをもとに、海上の渋滞予測や衝突などのリスクが高いホットスポットの予測精度を検証する。
共同実証では、富士通のデータ解析技術とAI技術、A*STARの組織であるInstitute of High Performance Computing(IHPC)が持つエージェント・ベース・モデリングやシミュレーションの知見と確率モデリングおよび機械学習の手法、SMUが得意とする大規模マルチエージェント最適化モデリングの知見を活用する。
これに加え、MPAが保有する船舶データを取り入れて検証を行う。これにより、IHPCが持つ直近の船舶の軌跡予測モデルと富士通のリスク計算モデルを組み合わせることで、ニアミスが起こる10分前にリスクを検出することが可能となる。また、IHPCの海上における今後の交通予測モデルと富士通のホットスポット計算モデル、SMUのインテリジェント・コーディネーション・モデルを組み合わせることで、刻々とリスクが高まるホットスポットを30分前に予測できる。これにより、海上運行の安全性向上や、衝突などのリスク軽減が実現する。
マラッカ・シンガポール海峡は、船舶の交通量の多い世界有数の海上交通路の一つ。世界の商用の海運交通の重要な航路として、海上運行の安全性を維持し続けることは、極めて重要だという。富士通、A*STAR、SMUは、2014年に共同で設立した先端研究組織(Urban Computing and Engineering Center of Excellence、UCE CoE)のもと、2015年より海上交通マネジメント技術の研究開発を進めてきた。
富士通は今後、これまでの共同研究開発の成果と、今回のMPAとの検証により得られた知見やノウハウを統合し、海事向けソリューションとして提供していく予定だとしている。