日本CAは4月19日、2019会計年度(2019年3月期)の事業戦略を発表した。メインフレーム分野での再投資とDevSecOps、ソフトウェア製品のSaaS化に注力する。
日本CA 代表取締役社長の反町浩一郎氏
メインフレーム分野での再投資は、ソフトウェア新製品の投入と技術者育成支援の2つが柱になる。新製品では、メインフレームのワークロード最適化とキャパシティ管理を行う「CA Dynamic Capacity Intelligence」と、データの保護や管理を支援する「CA Data Content Discovery」の日本市場での投入を予定している。
国内のメインフレーム市場は、長らくオープン系システムへの移行がITベンダーなどから提唱し続けられてきたことで縮小傾向にあった。しかしIDC Japanなどによれば、2017年は金融と製造を中心にシステムの大型移行案件が集中したことで、金額ベースでは前年比12.3%増の763億円となった。
記者会見で代表取締役社長の反町浩一郎氏は、国内メインフレーム市場では今後も継続的な需要が期待される一方、メインフレーム製品の技術的な進化に対応しながらシステムを運用する技術者の高齢化とそれに伴う人材不足が深刻な課題として顕在化しつつあると指摘した。
加えて反町氏は、同社やIBMの調査を引用し、全ての業務アプリケーションをメインフレームに接続している企業の割合が55%に上ることや、世界中の企業データの70%がメインフレームに格納されているといった実態を紹介。メインフレーム分野の再投資がCA全体の事業戦略ながら、特に日本では積極的に取り組むと表明している。
メインフレーム向け新製品「CA Dynamic Capacity Intelligence」の概要
新製品のメリットとして、CA Dynamic Capacity Intelligenceではワークロードの最適化を通じたメインフレーム運用コストの低減を挙げる。CA Data Content Discoveryでは、チップレベルでのデータ暗号化が可能など、昨今のメインフレーム技術を活用して、5月に欧州で施行される「一般データ保護規則(GDPR)」といった各種コンプライアンスへの対応を支援すると説明した。
メインフレーム向け新製品「CA Data Content Discovery」の概要
技術者育成支援では、2015年7月に開始したトレーニングプログラマの「メインフレーム・アカデミー」を継続。これまでに120~130人が参加し、受講者の平均年齢は20代半ばという。COBOL操作をはじめ、メインフレームの運用技術を長期にわたって習得できるものとなる。反町氏は、2030年頃にはメインフレーム技術者の不足が深刻になるとの見方を示し、「この分野に取り組み続けてきたCAとしての社会的な責務もある」と、取り組みの意義を強調した。
一方、DevSecOpsやソフトウェア製品のSaaS化は、2017会計年度の事業戦略で掲げた「モダン・ソフトウェア・ファクトリ(MSF)」構想での取り組みを強化するもの。前者では、ソフトウェアの脆弱性を悪用するサイバー攻撃の多発ぶりを受け、開発段階でのセキュリティの確保を支援するために、2017年4月に買収したソースコード解析の「Varacode」を日本市場に投入する。後者ではアプリケーション性能管理やID管理といったソフトウェア製品をSaaS化していく。
2017会計年度の実績について反町氏は、MSF構想が着実に受け入れられつつあり、収益が前年度比で30%増加したと報告。ただ、日本市場ではMSF構想でうたう「企業ビジネスのデジタル化」におけるアジャイル開発やDevOps、API活用といった取り組みが端緒についたばかりだとし、これらの認知拡大に向けたマーケティング活動を強化する。
「デジタルテクノロジ」の普及策