本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、米AvanadeのAdam Warby CEOと、ネットアップの岩上純一 代表取締役社長の発言を紹介する。
「日本企業も基幹システムのクラウド化を急ぐべきだ」
(米Avanade Adam Warby CEO)
米AvanadeのAdam Warby CEO
AccentureとMicrosoftの合弁会社である米Avanadeの日本法人アバナードが先頃、日本企業の基幹系をはじめとした業務システムをMicrosoftのクラウドプラットフォーム「Azure」へ移行するための「クラウドトランスフォーメーション支援サービス」を国内で提供開始すると発表した。
冒頭の発言は、新サービスの発表に際して来日したAvanadeの最高経営責任者(CEO)であるAdam Warby(アダム・ワービー)氏が、日本企業の基幹システムのクラウド化についての見解を述べたものである。
アバナードが今回発表した新サービスの内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは発表会見でのWarby氏の発言に注目したい。
Avanadeは前述したように、AccentureとMicrosoftが2000年に設立した合弁会社で、Microsoftの技術とAccentureのコンサルティングなどのノウハウを組み合わせて、エンタープライズ領域にビジネスを広げることをミッションとしている。今回の新サービスもそのミッションに則ったものである。
とりわけ、業務システムのクラウド化についてWarby氏は、「米国では既に多くの企業が移行を進めており、基幹系をAzureに移すケースも目立ってきている」と語り、この流れで日本企業について冒頭の発言となった。
では、なぜ基幹システムのクラウド化を急ぐべきなのか。これに対し、同氏は次のように説明した。
「クラウドには経済性や性能の柔軟な利用、管理性などのメリットがあるが、それに加えて最近ではクラウド上で最新のデジタル技術を組み合わせて活用できるようになってきた。私たちとしては基幹システムでそうしたメリットを生かせば、企業としての競争力を一段とアップできると確信している」
ただ、ここで同氏が言うクラウドは、すなわちパブリッククラウドである。多くのエンタープライズ企業では、同氏の冒頭の発言とは裏腹に、基幹システムを一気にパブリッククラウドへ移行するのにはまだまだ慎重との印象が強い。そこで、会見の質疑応答で、「エンタープライズ企業の業務システムは将来的に大半がパブリッククラウドへ移行するのか、それともオンプレミスとパブリッククラウドのハイブリッド利用が中心になるのか」と、Warby氏の見方を聞いてみた。すると、同氏は次のように答えた。
「大半のケースはパブリッククラウドに移行すると考えるが、機密性の高いデータを扱う業務についてはオンプレミスで継続利用しなければならないこともある。ただ、その場合でもAzureStackを利用すれば、快適なハイブリッド環境を構築することができる」
AzureStackの話が出たものの、基本的にはパブリッククラウドが大半を占めるとの見方だ。果たして新サービスのインパクトはどうか。注目しておきたい。
会見の登壇者。左からWarby氏、日本マイクロソフト 執行役員常務パートナー事業本部長の高橋美波氏、アクセンチュア オペレーション本部インフラストラクチャー&クラウドサービス統括マネジングディレクターの西村雅史氏、アバナード代表取締役の安間裕氏