ランサムウェアの蔓延や仮想通貨交換所に対するサイバー攻撃、IoT(Internet of Things)を狙ったマルウェアの増加など、2017年はこれまでにないセキュリティリスクが顕在化した1年だった。世界中からセキュリティ専門家が集う総合コンファレンス「RSA Conference 2018」の基調講演では、新たな脅威に対し、企業や組織がグローバル規模で連携し、立ち向う必要性が語られた。
会場となったモスコーンセンター。今年の参加人数は約5万人。日本からも100人が参加したという
セキュリティ担当者はポジティブな姿勢で
米国時間4月16日から5日間、米サンフランシスコのモスコーンセンターでセキュリティの総合コンファレンス「RSA Conference 2018」が開催。RSAがDell technologies傘下になってから2度目(通算27回目)となる同カンファレンスは、RSAの独自色よりも“セキュリティコミュニティーの会合”的な意味合いが強い。
サイバー攻撃対策は、日々の地道な積み重ねで改善を続けている。攻撃されたことを嘆くよりも、防御に成功したことに目を向け、この努力を進めていこう――。
4月17日のオープニングの基調講演に登壇したRSAの最高経営責任者(CEO)を務めるロヒット・ガイ(Rohit Ghai)氏は約5万人の聴衆にこう語りかけた。
RSA CEOのRohit Ghai氏。2017年1月に就任後、初のRSA Conference(米国)基調講演登壇となった
近年、RSA Conferenceではサイバー攻撃に対するアグレッシブなメッセージを発している。「攻撃者を追い詰めるハンターが必要」(2016年)、「カオス状態の世界で想定外の混乱に備えよ」(2017年)などがそれだ。
Ghai氏は「サイバー空間では攻撃者が優位であることに変わりはない。セキュリティ担当者は日々の対策に追われているが、セキュリティインシデントの44%は対処されていないという調査結果もある」としつつも、ポジティブな姿勢でセキュリティ対策に当たることが重要だと強調した。
今回のコンファレンスで掲げられたテーマは「Now Matters(今、そこにある課題)」である。Ghai氏は「Now Matters」の象徴的な例として、ランサムウェアである「WannaCry」の蔓延を挙げる。
2017年5月には世界中の病院や銀行などのシステムがWannaCryに感染し、手術ができなかったり、送金業務が止まったりした。しかし、WannaCryがターゲットとしたWindowsの脆弱性は、すでにセキュリティパッチが公開されていたものだ。つまり、適切にパッチを適用していれば、被害には遭わなかったのである。
「WannaCry(の蔓延)は、われわれにとって“目覚まし”になった。『セキュリティリスクはビジネスリスクである』と世界中が痛感しただろう。(中略)企業はIT担当者だけでなく経営層までを当事者とし、全社体制でセキュリティ対策に取り組むべきだ」(Ghai氏)
かねてからRSAでは「Business-Driven Security(ビジネス駆動型セキュリティ)」の視点に立脚し、「サイバーリスク」を「ビジネスリスク」として捉える重要性を説いている。サイバー攻撃によってシステムが停止したり、データ侵害によって金銭や情報資産が盗取されたりした場合のマイナスインパクトをビジネス視点で考慮し、ビジネスリスクの高いものから優先的に対策を講じるというアプローチだ。