Ghai氏は「サイバーリスク=ビジネスリスク」の好例として「サイバー保険の急増」を挙げた。「保険業界に携わる80%の人が『サイバー保険商品は増加が見込まれる』と回答している。つまり、サイバーリスクは(保険業界にとって)“カネ”になるということだ」(同氏)
新技術の誕生は未知の脆弱性の誕生だ
続いてGhai氏は、人工知能(AI)や機械学習といった、新技術のセキュリティ対策についても言及した。2017年に何らかの形で自社システムにAI機能を導入した企業や組織は46%に上るものの、セキュリティに対する認識は低いという。

46%の企業や組織が2017年中にAIや機械学習を自社システムに導入したという。この数字を多いと見るかどうかは意見が分かれるところだ
「『マーフィーのサイバーセキュリティの法則』ではないが、新しい技術の誕生は、新しい脆弱性の誕生に等しい。(中略)特に新技術や新サービスでは、開発者が想定していないような操作が頻発し、それによって新たな脆弱性が生まれる可能性もある」(Ghai氏)
こうしたリスクを低減するためには、ユーザーの行動を先読みし、不正、不適切な操作を検知することだ。その際に有用なのが「User and Entity Behavior Analytics(UEBA)」機能であると同氏は説く。その解の1つとなるのが、同社のセキュリティ情報イベント管理(Security Information and Event Management:SIEM)プラットフォームである「NetWitness」の最新版だ。
RSAは4月5日、ユーザーの行動分析技術を開発する米Fortscaleを買収した。Fortscaleは、ユーザーやシステムの振る舞いを機械学習し、異常や不正な活動を検知する技術を有する。RSAはNetWitnessにUEBAを組み込むことで、これまで検知が困難だった異常な行動や操作を検出することができるとしている。

展示会場のRSAブースではNetWitnessが実演されていた
さらにGhai氏は、データプライバシーの問題にも言及した。米国では2018年3月にCLOUD(Clarifying Lawful Overseas Use of Data)法が成立。これにより政府や捜査当局は、捜査令状がなくても事業社が持つ個人データを見ることができる。欧州では2018年5月から一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:GDPR)が施行される予定だ。企業は、これまで以上に厳しいデータの管理と保護が要求されるようになる。
こうした潮流の中、セキュリティベンダーや担当者はどのようにデータプライバシーを守り、適切に運用していくのか。Ghai氏は「(CLOUD法は)国境を越えてテロと戦うことを可能にする。サイバー攻撃からデータプライバシーを保護するためには、一定の枠組みが必要である」との見解を示し、「信頼の構築には一生かかるが、それを失うのは一瞬だ」と語り、講演を締めくくった。

長年かけて構築した信頼も失うときは一瞬だ。Ghai氏はFacebookの個人情報流出を念頭に「情報の取り扱いに利用者の厳しい目が向けられている」と指摘した