海外コメンタリー

WannaCry騒動から約1年--英公共医療サービス、次なる大規模攻撃への対策に今なお課題 - (page 2)

Danny Palmer (ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部

2018-05-01 06:30

 WannaCryは、2017年初頭に米国家安全保障局(NSA)から流出したことが明るみに出たハッキングツールの「EternalBlue」を利用している。Microsoftは「Windows」を狙ったエクスプロイトから保護するためのパッチをリリースし、英国内のNHSトラストは、攻撃からシステムを守るためのアップデートをインストールするように警告が発せられていた

 それにも関わらず、多くの組織はパッチを適用せず、システムはその後、WannaCryに感染した。これらの被害は、パッチが適用されていれば食い止められていたはずだ。

 NHS EnglandとNHS Digitalが、MPらに語ったところによると、トラストのIT資産はその複雑性と規模ゆえに、システムにパッチを適用するのが困難だという。「パッチを適用中に医療機器の使用に支障をきたし、患者に臨床的リスクが及ぶかもしれない。またITシステムの一部にパッチを適用すると、システムのそのほかの部分に障害が起こる可能性がある」

 しかしMPらは、仮にパッチを適用していなくても、ファイアウォールとネットワークセグメンテーションさえ行っていれば、組織は保護されていたとの報告を受けている。

 報告書を通じて浮き彫りになっている重要なメッセージは、NHSがWannaCryに対してまとまりのない対応をとってしまった過ちから、学ぶ必要があるということだ。しかし保健省は、まだやらねばならないことが山積みであることを認めている。

 保健省の広報担当者は、米ZDNetに次のように語っている。「NHSのあらゆる部署が、WannaCryを反省材料として肝に銘じる必要がある。NHSは攻撃以来、サイバーセキュリティを改善しているが、まだデータと患者治療を守るための取り組みが残っている」

 保健省は2020年までのサイバーセキュリティ予算として、さらに2億ポンド(約304億円)の予算を確保したという。しかし報告書は、NHSがサイバーセキュリティに関して特別な問題を抱えていると指摘した。これは「NHSの組織が地域組織を含め、サイバーセキュリティの優秀な人材をリクルートして、維持するのに苦労するため」である。

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