暗号学の権威たちが、ブロックチェーン技術やソーシャルメディアに否定的な議論を展開した。米国時間4月16日、年次イベント「RSA Conference」のパネルディスカッションでのことだ。
マサチューセッツ工科大学(MIT)のRon Rivest教授(RSAの「R」はRivest氏の名前から来ている)は、「ブロックチェーンはしばしば、セキュリティ問題に対する妖精の粉(訳注:『ピーターパン』に出てくる、振りかけると空が飛べる魔法の粉)のように見られている」と述べた。これは、「どんなアプリケーションでもブロックチェーン技術を使えばよりよく、安全になる」というイメージがあることを指している。Rivest氏は、ブロックチェーン技術は分散型であること、アクセスが開かれていること、改ざん不能であることなどの興味深い特徴を持っているが、規模の拡張性やスループット、遅延などに問題があると指摘した。
特に、電子投票には向かない技術だという。同氏は「投票者は、自分の投票が適切に記録されたことを確認したいと考える」はずであり、これは検証可能でなければならないことを意味するが、「そもそも記録が間違っていれば、改ざん不能であっても意味がない」と述べた。
ほかのパネリストも批判を展開した。パネルディスカッションの壇上にはほかに、イスラエルのワイツマン科学研究所で計算機科学の教授を務めるAdi Shamir氏、公開鍵暗号研究の開拓者であり、現在はCryptomathicの暗号学者およびセキュリティ専門家を務めるWhitfield Diffie氏、セキュリティ研究者でありコンサルタントのPaul Kocher氏、Signalの創業者であるMoxie Marlinspike氏が並んだ。
パネルの最中には、Shamir氏が暗号学(cryptography)と暗号通貨(crypto currency)は区別すべきだと話していると、Diffie氏が話を遮って一方は「C」を使って綴り、もう一方には「K」を使うべきだと述べ、Shamir氏が自分のジョークを取られたと言ってDiffie氏を咎めるという一幕もあった。
Shamir氏はさらに、ブロックチェーンは「過度に持ち上げられている」と付け加えたが、量子コンピューティングが一般的になった時代には、デジタル署名の有効性を保証する手段として使えるかもしれないと語った。「将来、ブロックチェーンを使ってデジタル署名の安全性を保証する方法として、単純にその署名が量子コンピュータ以前のこの時代に生成されたものであることをブロックチェーンで証明するという手がある」と同氏は述べている。
またDiffie氏は、暗号通貨のマイニングに使われているコンピュータが家庭に暖房を提供している例に触れ、「暗号通貨を作りながら、その費用を暖房費で償却できる」と述べた。
Kocher氏は「ブロックチェーンは興味深いツールだが、それ自体はビジネスではない。これは、ログ管理ツールのようなシステムを作るのに使える面白い部品にすぎない」と述べている。