“APIエコノミー”環境は整備済み--ビジネスサイドから見たAPIの効果と注意点

國谷武史 (編集部) 2018年05月08日 06時00分

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 API(Application Programing Interface)は、クラウドコンピューティングの普及とともに、システムやデータ、サービスをつなぐ技術として、既に“市民権”を得ていることだろう。しかし、ビジネスでのAPIの利用は、金融など一部の業界を除けば、まだ“市民権”を得る段階には至っていない。ビジネスサイドから見たAPIの効果と注意点とは、どのようなものだろうか。

ビジネスにおけるAPIの効果

 ビジネスとしてのAPI利用が最も進んでいる業界の1つが金融だ。インターネット通販におけるオンライン決済の広がりなどを背景に、ネットワーク上でお金の情報をやり取りするシーンが増えた。その経験をもとに金融サービスへの参入に関心を持つ異業種の企業が増え、その分野の技術を展開する新興企業も急増した。

 金融業界は、この動きが従来のビジネスモデルを破壊しかねないと危機感を募らせ、異業種の企業や新興企業と手を組み、新しい金融サービスの開発と提供に乗り出すようになった。この事象が「FinTech(Finance Technology)」と称されるようになって久しいが、APIが異なるデータやシステム、サービスをつなぐ技術として、その仕組みを支えている。


TeslaユーザーというSoto氏のモバイルアプリには、空港に駐車した現在の状況が地図画面に表示されている。「地図を持たないTeslaがと地図会社とAPIで連携しているから実現したサービス」と話す

 米IBMが2016年に買収したエンタープライズ向けNode.jsを手掛けるStrongLoopで最高経営責任者(CEO)を務め、現在はIBMのクラウドインテグレーションとAPIエコノミーを担当するバイスプレジデントのJuan Carlos Soto氏は、金融業界や新興企業がAPIを駆使するのは、ビジネス上の課題に対応するためだったと指摘する。

 「2015年に実施した私たちの調査では、確かにPayPalのような異業種による金融サービスを既存のビジネスモデルを破壊するだろうと危機感を募らせる経営層ばかりだった。いわば、非常に保守的な金融が外的な圧力によって意識を変えざるを得なかった。新興企業も自社だけでは困難な新サービスを広げる上で大企業や異業種と組む必要があり、その術としてAPIを活用するようになった」

 APIが裏側で支える異業種連携によるビジネスモデルは、俗に「〇〇エコノミー」(〇〇には、デジタルやシェアリングなど、モデルによってさまざまな言葉が当てはめられる)と呼ばれる。企業単独あるいは旧来の事業連携では、決して成し得なかっただろう新たな収益獲得の機会や価値の創造を実現する可能性が徐々に知られるにつれ、APIのビジネス利用は金融業界から広がりだした。

 その代表例が自動車業界になる。Soto氏によれば、IBM顧客の1つのFIAT-Chryslerグループは、ユーザーに新たな価値を提供する目的で、グループ各社のシステムや修理工場などのパートナー、車、ユーザーのスマートフォンのモバイルアプリなどをデータでつなぐためにAPIを駆使している。例えば、ユーザーが自身の車を修理したい場合、モバイルアプリから修理を予約すると、車両の走行記録や修理の履歴、補修部品やその在庫といった各種データがAPIを介してやり取りされる。

 従来なら、ユーザーが電話で修理を予約し、電話で車の症状を工場の担当者に告げる。担当者は記録シートをめくって過去の修理内容を確認したり、メーカーに部品の在庫を確認したりして、作業を準備していたことだろう。API経由では、ユーザーがアプリから予約したタイミングで、必要な情報が必要な相手に適切なタイミングですぐに提供される。予約から修理完了までの待ち時間が短縮され、ユーザーの満足度が高まる。ユーザーが車を買い替える際にも、こうした体験からサポートの行き届いたメーカーを評価して、再びそのメーカーを選ぶ可能性が高まる。

 当然ながら技術としてのAPIは、こうした新しいビジネスモデルを具現化するための方法の1つに過ぎないが、新しいビジネスモデルの価値に気づいている企業にとっては、必須の方法の1つということになる。ただしSoto氏によれば、IBMが最近行った調査ではAPIを利用する企業は、2割ほどにとどまるという。

 「私たちの立場では、APIを利用する企業が少ない状況は、APIがビジネスに受け入れられていないというより、まだまだ潜在的な可能性を秘めている」とSoto氏は話すが、ビジネス側がAPIの利用に積極的ではないのはなぜか。また、どのような課題があるのだろうか。

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