中堅製造業に最適なERPを提供--米Epicor、日本市場で本格展開

阿久津良和

2018-05-08 11:30

 Epicor Softwareは1972年に米テキサス州で創業し、現在では3700人超の従業員を抱えるソフトウェア企業。製造業や流通業を中心とした顧客企業に対して、統合基幹業務システム(ERP)パッケージの「Epicor ERP」とSaaS版「Epicor Cloud ERP」などを提供してきたが、ベトナムが本拠地のFPT Softwareとパートナー契約を終結し、日本市場でのビジネス展開を本格的に開始することを4月26日に発表した。

 FPT SoftwareはEpicor ERPなどのシステム要件定義やコンサルティング、プロジェクト管理、保守などを提供する。EpicorのインターナショナルチャネルシニアディレクターHesham El Komy氏は「最も精通している製造業」に焦点を当てて営業を展開すると説明した。

 グローバル投資企業KKRの傘下企業であるEpicorは世界50カ所にオフィスを展開し、売上高が2500万ドル~10億ドルの企業を顧客として、150カ国30言語以上に対応する製造業や流通業に特化したERPを提供する。Komy氏は自社製品の特徴を「一言で述べればエンドトゥエンドを包括する。金属を生成する鉱石採掘から始まり、自動車製造企業に納品するネジ製造まで、サプライチェーン(供給連鎖)からデマンドチェーン(需要連鎖)まで」と解説する。

 既に多くのERPが存在するが、Epicorのアジア地域担当バイスプレジデントVincent Tang氏は「製造現場は注文に応じて発注する生産型に置き換わりつつあるものの、対応するERPは少ない。われわれは長きにわたり、現場のニーズに応えており、産業機械や金属精錬、金型鋳造、医療機器メーカーなど幅広い領域に対応する」と自信を見せる。

 顧客がEpicorのERPを選択する理由として、顧客の特徴を「大手よりも中堅企業」「自社のIT人材が潤沢ではない」「実装を素早く行いつつ柔軟性を望む」と3つの特徴を並べた。同社のERPはオンプレミスはもちろん、クラウドにも対応するが、「顧客によっては、クラウド移行後にオンプレミスもあわせて強化したいというニーズを持っている。われわれの製品は(クラウドとオンプレミスの併用や移行で)チューニングは不用。作業負荷は発生しない」(Tang氏)ため、その点を評価する顧客が多いと語る。

 ここでEpicorの導入事例を1つ紹介したい。某家電メーカーは大手ERPベンダー製品を導入していたが、保守費用など年間コストが高く、見直しを迫られていたという。

 そこでEpicorのERPと比較すると、必要な機能の9割を満たし、費用も3分の1に抑制できることから移行を実施した。某家電メーカーが実態を調査したところ、ERPを活用するのはわずか3割。Tang氏は「毎年割高な保守費用を支払っていた状況を見直し、弊社製品を選んでもらった」とコスト的利点をアピールした。

 日本は以前から製造業に強みを持つ国だが、このタイミングで日本市場へ展開する理由は、世界を包む趨勢が大きいという。

 「メガトレンドは3つ。経済力が西方から東方へシフトし、2020年の経済大国トップ12のうち7カ国は新興国と言われている。2つめは人口動態の変化だ。2020年の平均年齢を見ると日本は54歳だが、アフリカは24歳。市場の購買行動やメンタリティ(精神性)は市場全体に影響を及ぼす。最後は都市部への集中化。一説には人口の50%が都市部に集中している」(Komy氏)

 このように経済を取り巻く世界動向が変化する理由の1つとして、EpicorはITを挙げた。「日本はこれまで最先端に位置し、ITでもリーダー的立ち位置にいる」(Komy氏)からこそ、FPT Softwareというパートナーを得て、日本市場へ乗り出したという。また、製造実行システム(Manufacturing Execution System:MES)企業を買収し、顧客へは「EPRとMESを統合、連携したソリューション提供が可能になるなど、条件が整った」(Tang氏)のも大きい。

 Epicorが提供する製品やサービスは、FPT Softwareの日本法人であるFPTジャパンが担当する。以前からKKRとFPT Softwareは交流があり、Komy氏は「潤沢なリソースや実装能力、カバレッジを持つ戦略的な提携相手。厳選したパートナーと手を結ぶことで、顧客満足度を高めたい」と説明した。

 Tang氏は「日本は製造業系企業が多く、国産ERPを使う顧客も多いが、事業規模拡大時は高度な機能を持つERPが必要だ。しかし、ミッドレンジ市場の顧客にとって高額なERPはハードルが高く、(導入後も保守費用など)コスト面で苦労することが多い。だからこそ、われわれの出番」と主張。特定業務に従事する顧客に対してはベストフィットするERPを日本企業に提供するという。

(左から)インターナショナルチャネルシニアディレクターHesham El Komy氏、アジア地域担当バイスプレジデントVincent Tang氏
(左から)インターナショナルチャネルシニアディレクターHesham El Komy氏、アジア地域担当バイスプレジデントVincent Tang氏

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