--仕事や人材不足の問題はどのような影響があるでしょうか。
Daugherty氏:人材不足の問題には大きな影響があるでしょう。この問題は、もっとも大きな影響が出る分野の1つでしょうし、新たに答えを出すべき疑問の1つだと言えるかもしれません。この問題については本の中でも多くのページを割いていますが、AIに関わる人材の問題は、われわれの世代だけでなく、次の世代になっても続くと考えています。AIへの移行は長期戦です。変化のペースは速いのですが、3年で終わるようなものではありません。このテクノロジの導入は、今後長年にわたって続くことになります。
人材の問題は2つのレベルで生じており、そのことが問題を難しくしています。第1のレベルは、AI自体に関わる人材に関するもの、AIを推進する人材の問題です。多くの人がこの問題に突き当たっており、「わが社にはもっと機械学習の専門家が必要だ。畳み込みニューラルネットワークについての知識がある、深層学習ができる人間が必要だ」などと話しています。
確かにこれは重要な問題です。こういった人々は必要で、企業には人材へのアクセスが必要です。私は、この問題はさまざまな形で解決されると考えています。なぜなら、それらの仕事に必要な人材の数は、比較的少数だからです。
より大きな問題は、AI関連の人材ではなく、AIを使う側の人材です。さまざまな仕事にAIを使う必要がある人たちの仕事文化をどのように変え、どうトレーニングを施せばいいのか?どのようにAIを理解させ、取り込ませ、適切な理解に必要な背景スキルを身につけさせるのか?
この本での最後では、8つのスキルについて議論しています。仕事にAIを取り込むために、人々が身につけ始める必要があると考えられる、8つのスキルです。その対象は必ずしもAIの専門家ではなく、AIを使う必要がある人たちですが、今後はほとんどの人が仕事でAIを使うことになるでしょう。
--ビジネスリーダーは、どのような備えをすべきでしょうか。
Daugherty氏:今は、それぞれの組織が、それぞれのやり方で、AIに対する役員レベルの責任について考えるべき時期です。以前にも話したことがあるのですが、もう一度強調しておきます。私は、企業が最高AI責任者の必要性について考えるべきときが来ていると考えています。すべての組織が、この名前の新しい幹部職を設けるべきだというわけではありませんが、上級役員のレベルで、AIに対する備えについて説明責任を果たせるようにすべきでしょう。
最高AI責任者と呼ばれるような立場の人間が果たすべきだと考えられる役割は3つあります。1つは人材に関する問題の解決です。機械学習などの技術に関わる人材についてだけでなく、これらのテクノロジが従業員に与える影響について、幅広く考える立場の人間が必要です。その両面に備えるのは、大きな仕事になるでしょう。その観点からは、この種の対応能力に集中的に取り組む部門を設けることが良いスタート地点になると考えています。