ハードとソフトの分離で選択肢拡大--Dell EMCのオープンネットワーキング戦略

藤本和彦 (編集部)

2018-05-08 07:00

 PCやサーバはオープンなテクノロジを取り入れることで大きな進化を遂げてきた。これと同様に、Dell EMCは現在、ネットワーク技術のオープン化を図ることによって、その柔軟性や機敏性を高めたいと考えている。

 そうした戦略の中心となるのが「オープンネットワーキング」である。ネットワーク機器を構成するハードウェアとソフトウェアを切り分け、自由に組み合わせて利用できるようにすることを目指す。

Alley Hasan氏
Dell EMC Dell Networking 戦略担当ディレクターのAlley Hasan氏

 ネットワーク機器はこれまで、自社のハードウェアに独自開発の専用OSを搭載したクローズドな環境だった。これをオープン化することで、「サーバと同じく、ネットワークでも幅広い選択肢を提供していきたい」とDell Networkingの戦略担当ディレクターであるAlley Hasan氏は語る。

 同社のオープンネットワーキングの取り組みは2014年にさかのぼる。同年に発表した「Open Networking 1.0」では、ハードウェア基盤とネットワークOSを切り分けた分離モデルを提唱した。2016年には、ネットワークOS「Dell EMC Networking OS10」を発表。Debian GNU/Linuxをベースとした「OpenSwitch」を基盤としており、さまざまなアプリケーションを組み合わせながらネットワークシステムを構築できる。

 OpenSwitchは、ホワイトボックススイッチ向けに作られたオープンソースのネットワークOS。非営利団体であるThe Linux Foundationのプロジェクトとして開発が進められている。Dell EMCはOpenSwitchプロジェクトの主要メンバーであり、Hasan氏はプロジェクト責任者を兼任している。

 ホワイトボックススイッチとは、ユーザー自身がさまざまなOSやソフトウェア、機能を追加できるハードウェアスイッチ。大規模データセンターなどでの利用が広がっている。

 Dell EMCの直近の動きでは、ネットワークOSを必要最小限の機能に絞った「ネットワークベースOS」と、ルーティングプロトコルスタックなどの機能群「マイクロフィーチャー」に分離したモデルを「Open Networking 2.0」と呼び、ネットワーク機能のさらなる切り分けを進めている。ベースOSでは、L2/L3スイッチ、DHCP、DNS、AAA(認証、許可、課金)、Telnet、SSHといった基本機能だけを提供する。

 マイクロフィーチャーに関しては、ルーティングプロトコルのBGPやOSPF、冗長化構成機能のMC-LAG、障害検知機能のBFDなどをまとめた「Enterprise L3 package」を提供開始している。また今後、Ethernet VPN、VxLAN、VRF、MPLS、Segment Routing、Multicastといった機能も順次提供していくとしている。

 「プロトコルスタックをマイクロフィーチャーで提供することで、必要なものだけを選んでネットワークシステムを構築できるようになる」(Hasan氏)

 Dell EMCでは、OpenSwitchと有償サポートをセットにした「OS10 Open Edition」と、OS10 Open Editionにデータセンター向けソフトウェアスタックを追加した「OS10 Enterprise Edition」を用意する。オープンネットワーキング対応のスイッチ製品としては、「S4048-ON」「S4048T-ON」「S6010-ON」「Z9100-ON」などを提供している。

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