eコマースサイトがどれほど洗練されたものになっても、商品配達のラストワンマイルは、優れたデジタル体験とは言いがたいのが実情だ。その解決策として期待されているのが、「サイレント認証」という新しい認証技術だ。サイレント認証は、スマートフォンに実装された地理情報システムにより、顧客が定期的に立ち寄る店、歩き方などの振る舞いをデータとして活用し、機械学習と組み合わせることで、本人認証のためのプロファイルを構築し認証に活用する。
さらに、顧客の現在地も地理情報システムで把握することで、最適な場所と時間に、間違いなく本人に配達することができる。顧客の利便性が高まるのはもちろん、eコマース業者も再配達コストを抑制することができる。
オンラインで買い物をしたことのある人にとっては、毎度おなじみの話で恐縮だ。スマートフォンやノートPCを使ったeコマースで、発注の操作がスムーズかつ迅速に処理されるようになっても、いわゆるラストワンマイル、顧客への商品の物理的な配達は、顧客にとってもeコマース業者にとっても、快適なデジタル体験とは言いがたい。
しかし、解決策は見え始めている。時間がかかる不便な認証プロセスなしに、商品の受取人に「気づかれず」認証できる革新的なシステムが出現した。これにより、eコマース業者は配送計画をより正確に立てることができる。このシステムは、振る舞いによる生体認証や機械学習などいくつかの最先端技術に基づいて、商品配達の課題に根本的な解決策を提供するものだ。そして、これも毎度おなじみの話だが、この解決策は技術主導でもたらされたのではなく、顧客ニーズから形作られたものだ。
デジタル化の時代に、あなたが求めているのは何ですか? これは、われわれが調査プロジェクトで最初に消費者に尋ねた質問だ。調査結果は、24時間365日の接続性というわれわれの使命を裏づけた。いつでもどこからでもつながることは、消費者の求めるベースラインの期待値だった。

しかし同時に発せられた強い要望は、つながった世界の中で、個々のニーズに合わせカスタマイズされた、シンプルかつシームレスに接続されたサービスとソリューションに対するものだった。そして、この要望はデジタル世界全体で消費者が求めるものだ。言い換えれば、はい、みなさんで、同じサイズを着てくださいね、では21世紀の消費者には通用しないのだ。
eコマースにおける顧客体験を調査したわれわれジェムアルトの担当チームは、多くの示唆に富んだ事実を発見した。以下は、最近の欧州における消費者調査の一部である。
(Sources: MetaPack ‘2017 State of eCommerce Delivery’ Consumer Research Report)
- 調査対象となったオンライン購入者の50%が、配達の悪さを理由に、同じeコマース業者から二度と買わない。
- 39%は、配達時の悪印象を理由に、同じeコマース業者から二度と買わない。
- 60%は、より便利な配達オプションのあるeコマース業者を選択する。
- 43%は、ソーシャルメディアを使って、お粗末な配達への不満を表に出す。
これらすべては痛いところを突いている。eコマース業者の課題は、信頼性を提供するだけでなく、消費者ひとりひとりの個性に対応するカスタマイズに完璧に適合するソリューションを考え出すことだ。
そして答えは、信頼性、高速の認証、自動的なリスク評価の、3つの組み合わせにあった。サイレント認証システムは、もともとオンライントランザクション処理に適用するために設計された、使いやすく、堅牢でリスクに応じたセキュリティを実現するツールだ。このシステムは、顧客が本人であるかを自動的に判定する。その中身は、顧客が定期的に立ち寄る店や、ふだん通る道筋や目的地、歩き方、スマートフォンやタブレットをどのような場合に使用しているかなどの振る舞いを学習する、地理情報システムだ。